企業の社会的責任と新たな資金の流れに関する研究会

第11回研究会

実施報告

  • 日時:2003年12月8日(月)18:00-20:00
  • 場所:経済産業研究所1121会議室(経済産業省別館11階)
  • 参加者

議事録

※第11回研究会は、日本総合研究所の足達英一郎氏より「企業の社会的責任と新たな資金の流れに関する調査研究報告書・中間報告」および別紙「第2章第4節社会的責任投資のマクロ経済的意義」の分析の考え方について」に基づいて、研究会報告書の中間進捗状況の説明後、出席者より報告書の取りまとめに向けて、コメントを受ける形とした。なお、本研究会の報告書は、各出席者からのコメントを盛り込み、3月末までに研究会報告書を取りまとめ、公表する予定である。

[研究会報告書中間報告へのコメント] 第1章、第2章に関するコメント

CSRに関する定義について

川村:
CSRの定義について例示等で示す必要があるのではないか。

藤井:
CSRの例示を示す際は、一国内でのものと各国共通なものに分ける必要がある。

欧米の資金仲介主体育成の紹介について

美原:
欧米の例を挙げ「投資家教育」に関する話題も加えた方が良い。

藤井:
国内で政府の従来機能に限界が出てきているということと、国際的には新たな社会的課題が生じているということをについて分けて書くべき。

田中:
社会的課題の増大にグローバル化の進展に伴う労働問題とあるが、人権問題の記述も必要。国内に限らず、国際的な取り組み、たとえば、現実にミャンマーに投資をする企業を選定しないというような社会的責任投資もある。コラム的なものでもいいので、明示した方が良い。

政府セクターの機能不全の部分について

水口:
政府セクターの機能不全というよりも社会的課題の増大により、政府が対応する範囲を超えている面が増えてきているというような書きぶりの方が良いのではないか。

野中:
企業の活動を促すためには、小さな政府の実現を目指し、社会的課題の解決について政府としては何をすべきか検討し、官民がそれぞれ得意な分野を分担する必要があるのではないか。リスクについては、民間が負えない部分を政府が負うことになるのではないか。

美原:
政府の失敗という視点はあるものの、最近は革新的な自治体の取組みも多くある。その点についても触れたら良いのではないか。

企業セクターの不活性化の部分について

杉田:
カルテルや談合など、民間の不祥事も頻発しており、政府の機能不全だけではなく、市場も失敗していることから、政府の失敗だけではなく、「市場の失敗」も取り上げるべき。

「第2章 第4節 社会的責任投資のマクロ経済的意義」の分析について

熊野:
経済効果の部分では、雇用面に重点を置いて分析する方が良いのではないか。

村田:
雇用については、「経済的意義」としてではなく、「社会責任投資の意義」と位置付け、第4節ではなく第1節に掲載した方が趣旨に則していると思う。

また波及効果の数字は、試算が難しいということであれば、あえて掲載する必要はないと思われる。むしろ社会的責任投資で、既存の資金フローが潜在的にどこまで変化するかを予測する方が重要だと思う。

田中:
行政サービスを民間に委託し、少ない予算の中で事業を行うのであるから、行政サービスを民間に委託することにより雇用が増えるという点には疑問がある。民間委託などでは、本当の意味で雇用が生まれたということにはならない。ドイツやデンマークの風力発電のような例が、本当に雇用が増えたということになるのだと思う。

藤井:
本研究会は雇用対策ではなく資金の流れに注目したものであるため、経済効果については、雇用を「目的」としたものではないことに注意が必要。

杉田:
雇用推計というのは、難しいのではないか。

「社会的活動をになう主体の鳥瞰図」について

美原:
非営利、営利という表現を公共部門、投資家という表現とした図にしたら良いのではないか。また、P.17とP.18の議論と結びつける必要がある。

[研究会報告書中間報告へのコメント] 第3章、第4章に関するコメント

愛県債について

瀬越:
ミニ公募債は画期的であったといえるが、実際は情報開示がなく使途が明確ではなく、問題がある。

「社会的責任」に対する企業の対応姿勢について

水口:
日本人の観点(価値観)から欧米企業を評価することも必要ではないか。

図の訂正について

水口:
「会費収入」や「寄付収入」についても高い成果を要請される側面もあるので、誤解を受けないように訂正が必要。

金融機関側の課題について

水口:
「元本保証のあるSRI」という意味で、銀行や信用金庫などにも話を触れられないか。

企業の社会的責任に着目した検討について

藤井:
日本においてCSRをどのように捉えるのかというような位置付けがまず必要。P34の書き出しは、「日本においてCSRをどのように考えるのか」についてから始め、その後にEUの話題とすべきであろう。

年金基金の開示基準策定について

水口:
銀行の投融資開示基準に関する記述も加えたら良いのではないか。オーストラリアやカナダでは既に存在している

有価証券報告書等へのCSRにかかる事項の追加の検討

瀬越:
開示省令を変えるということには、「強制開示」であるか「任意開示」であるかという2つの形態がある。たとえば、民営化案件に係る株式の国内募集・売り出しと国際募集・売り出し、の2つがある場合で、海外の開示が厳しい要求をしている場合、海外における現地の法律による開示内容が日本国内での開示内容より詳しい状況が発生する。その場合、投資家平等の原則に反する状況となる。そこで、日本の証券取引法・開示省令は開示を求めていないけれども、任意で追加開示する「任意開示」の問題が出てくる。NTT等の国内民営化案件や海外企業のグローバル・オファリングにおける日本での販売の際に、この種の問題が発生し、その都度対応を強いられた記憶がある。純粋に国内案件の場合にも任意開示はある。我が国の証券取引法・開示省令の大きな変更は難しいと思われるので、段階的に行っていくことが重要。現在、東京証券取引所からの要請で、決算短信にガバナンスに関する情報を開示させるような動きがある。

水口:
議案の提案、開示省令などについて前向きに書いて良いと思う。

藤井:
議決権・開示省令はガイドラインからつながっていく中で書けば良い。ISOの件も同様に、全体の枠組みの中で書けばいい。

CSR企画の開発

藤井:
日本が国際的に貢献する役割としての中での位置付けという見方も必要