第1回:反中国の歴史から見るチャイナタウン

韓国にチャイナタウンを建設する問題が活発に論議されている。最近、駐韓中国大使館が韓国政府に送った公文書を通じて「仁川市が敷地を提供すれば中国が資本を投資して大規模なチャイナタウンを建設する」と明らかにした。中国大使の名で出された公文書によると、チャイナタウンには中国文化体験館と中国対外文化交流協会のような中国政府機関や、韓中友好協会、展示館、留学相談室などが入る予定だ。もちろん、ホテルとレストランは、チャイナタウンを構成する最も重要な部分になる。韓国政府は中国政府の要請に肯定的な立場を見せている。

チャイナタウンをめぐる論議は韓国が持つ閉鎖性と外国人に対する差別に言及する時、必ず登場する韓国人のタブーの1つだ。チャイナタウンは全世界のどこにでもある世界共通の文化でありビジネスだ。しかし、地理的にも文化的にも中国にもっとも近いにも関わらず、韓国にはまだチャイナタウンがない。
人権問題に注目する人々は「中国人は韓国で差別を受けているから、チャイナタウンさえない」と非難する。チャイナタウン建設論議では人権問題と、さらに国際化にからみ華僑の経済力が、いっそう注目されている。「華僑資本を引き入れるためにも一日も早くチャイナタウンが必要だ」という論理だ。

歴史的に見ると、チャイナタウンは、アジア全体同様、朝鮮半島のどこにでも見られた風景だった。しかし、この風景は韓国が近代化を始めた1945年の独立以後、急速に変わった。変化の立役者は韓国の初代大統領である李承晩と、満洲軍官学校出身である朴正煕大統領だった。2人の大統領は、チャイナタウンと華僑をどのようにすれば抑圧できるのかに注目した。特に朴正煕大統領は1970年代、「外国人土地取得と管理に関する法」を制定し、華僑たちの財産権を合法的に制限した。チャイナタウンの中心として、1万人以上の華僑が居住した仁川公園周辺の中国食堂と街並が門を閉じたのは、30年前に制定された差別悪法のためであった。差別悪法は、当時、中国食堂は韓国食堂と区別して、米飯を売ることができないという珍しい法であった。粉食奨励運動という大義名分が掲げられたが、中国食堂の代名詞でもある焼飯は「法の名のもとで」影をひそめなければならなかった。

李承晩と朴正煕の2人の大統領が巧みに華僑を弾圧したという事実には疑問はないが、どうして2人は中国人を弾圧したのだろうか。
理由は簡単だ。彼らは幼年時代に経験した屈辱をありありと憶えていたからである。李承晩大統領は在任期間中、駅周辺の中国飯屋を鉄道周辺施設開発という名目で国有化した。朝鮮半島の歴史をよく見ると、商業の中心である駅の周辺はいつも華僑が占めた。華僑は人々が集まる駅の周辺で飯屋と建物賃貸業、高利貸金業を経営し、誰も無視することができない富力と権力を育てた。

華僑が朝鮮の人にとってどんな意味を持っているかは、1920年代に活躍した韓国の著名なリアリズム作家である金東仁の短編小説「じゃがいも」を読むとよくわかる。小説の中の主人公「福女」が野菜畑で、じゃがいもを密かに盗んだ時に現れるのは、畑の主人で「王」という名字の中国人である。王は貧民窟出身の福女に罰を与える代わりに、お金を払って、彼女と寝る。王は、その気になれば何でもできる、当時の支配階級であり、お金と権力の象徴だ。その後、王は100ウォンで若い朝鮮娘を買って結婚し、嫉妬する福女を殺害する。さらに、王は完全犯罪のために福女の夫を買収し、脳溢血死を偽装する。王が人妻である福女をお金で買い、ひいては完全犯罪を可能にした理由は、王の背景にある中国は朝鮮を絶対的に支配する存在だったからだ。

1876年、日本が朝鮮へ開化を要求した江華島条約の第1条には「朝鮮は独立国である」とある。朝鮮は中国の干渉から離れ、自由な国として動くことができる、という条項に対して、当時の朝鮮人たちは両手を挙げて歓迎した。後に、江華島条約は日本の朝鮮半島植民地化の始まりとなるが、当時の朝鮮人の反中感情を背景に作られた条約といっていいだろう。当時の朝鮮人の首を押さえ付けた勢力の1つは、朝鮮全土に暮した約3万人の中国人だった。アメリカで教育を受けた李承晩初代大統領と、日本で教育を受けた朴正煕大統領はお互いに全く違った背景にもかかわらず、反中感情については一致した。2人にとって、中国人が集まるチャイナタウンは近代化に失敗した朝鮮人が、お金のため妻子まで捧げなければならない悪魔の城であった。

2人の大統領の中国観は21世紀から見ると、受け入れにくい古臭い過去の論理に過ぎない。現在、韓国人にとって中国は、韓国の未来を開く希望の国として受け入れられている。ある新聞調査結果によると、韓国人の95%が、チャイナタウン建設に同意しているという。韓国で中国人の総本部になるチャイナタウンが作られるのは、もう秒読み段階である。経済力を土台にした韓国人の自尊心と自負心が13億人の大国である中国をどのように受け入れるのか。韓中の2カ国の未来に関する答えは、建設されるチャイナタウンから見つかるだろう。


連載2回は、WIN―WIN GAMEとして、爆発する韓中貿易。