IoT/インダストリー4.0が与えるインパクト

第24回「IoTによる中堅・中小企業の競争力強化に関する研究会(NO.4)」

岩本 晃一 上席研究員

先日、開催された標記研究会において、藤田委員から、「IoTによる中堅・中小企業の競争力強化」に関する課題について、以下の通りプレゼンがあったので、ここに紹介したい。

プレゼン者

藤田英司委員(三菱電機株式会社 FAシステム事業本部e-F@ctory戦略プロジェクト)

プレゼン内容

1. 現状分析

(1)市場環境変化
ITの進化に伴う事業変革の動きが、国内外に急速に波及し、製造業における生産性革新が加速。情報の有機的結合・活用により、更なる生産性改善、経営改善が求められている。

(2)顧客の意識変化
従来の製造業は、ITを活用しても、部分的な情報活用しかできていなかったが、情報インフラの発展等により、製造現場から会社全体の情報一元化ができる環境になってきている。大手企業においてはIT/IoTを駆使し、部分最適から全体最適を求める声が多くなってきている。特に経営者層の思いが顕著に現れ、具体的な取り組みに向けた活動が急速に進んでいる。

(3)市場環境分析(外部環境)
次世代製造業モデルへの転換が必要であり、市場は新たな付加価値提供を求めている。
①政治(Political)面では、地政学リスクによる製造拠点の移転(国内復帰)、アベノミクス・TPP発効による産業構造の変化、製造業中心の税制緩和、製造R&D強化(日本再興戦略等)などが挙げられる。
②経済(Economic)面では、中国および新興国の競争力向上、電機業界の再編(東芝・シャープ)、先進国は製品単品売り切り型ビジネスから脱却、付加価値提供型ビジネスへシフトなどが挙げられる。
③社会(Social)面では、少子高齢化による労働人口減、熟練工の高齢化によるノウハウ不足、サービス業中心の経済構造、女性および高齢者の社会進出増加が挙げられる。
④技術面(Technology)では、スマホの高機能化(有機EL、小型電子部品等)、次世代自動車(EV、自動運転等)による技術革新、IoT/ビッグデータ/クラウドなどIT技術活用、次世代製造業モデル台頭(Industrie4.0、IIC等)などが挙げられる。

2. 中小企業における課題

(1)課題認識
①製品の生産を如何に安く、効率良く行うかを各社は検討しているが、そもそも、需要の爬行性により安定した生産ができていないことが大きな問題である。では、何故爬行性があるか?
それは、中小企業は大手企業が組立て・製品化する部品の供給を担っている部分が多く、市場における需要変動により、需要の爬行性が大きく、安定した製品(部品)製造が 難しい環境にあるため。それでは、どうしたら安定した需要を確保できるか?
②安定した需要を確保できればどうなるか? 先々の需要が見通せれば、必要な設備、材料、人材などの投資や準備に着手できる(プラスのスパイラル)。また、利益向上に向けた方策を検討できる。すなわち、設備の稼働率向上(設備投資含む)、使用する材料の先行手配(原価低減、納期対応力強化)、適正人材の確保・配置、更なる効率化に向けたインフラ投資、生産システム改善である。
③安定した需要を確保できなければどうなるか? 突然の需要拡大により、短納期での製品(部品)供給が求められ、対応しなければ、商機を失い、対応すれば、短納期での材料確保や人材投入により、本来の原価をオーバーし、損益悪化につながる。突然の需要減少により、前もって手配した材料が在庫過多となり、売上減に加え、棚残増加により損益悪化になる(負のスパイラル)。

(2)安定した需要確保策(案)
①従来継続して取引のある顧客の需要状況をまとめ(時期、需要規模、競合含め自社の優劣等)、営業が先行的に活動した上で、受注確度を向上し、需要獲得に結び付ける。緒元は、個人の手帳や、頭の中、EXCEL等の帳票ソフトで纏めているケースが想定されるが、データベースとして管理し、需要に紐づいた各部門での情報共有が必須である。
②過去納入した顧客のデータベース管理による先行営業、過去納入した顧客のリピート需要やリニューアル需要を獲得する為、中小企業はどの様な活動をしているか? ①項と同様に、顧客の情報を纏めているだけの資料は意味が無い。 有効に活用してこそ価値を生む。過去納入した顧客の評価、先々の方向性、市場における競合状況の把握等、ダイレクトメール、キャンペーンのご案内等、少ない営業でも顧客に届く情報を発信する等、インフラ活用は必要である。
③顧客の製品設計段階における食い込みに参画する事による、差別化受注の確保ができれば、顧客の製品化計画、市場の需要に対する製品の在り方など従来自社だけでは把握できなかった情報の入手も可能となる。だが、それは非常に難しくハードルが高い。では自社で何ができるか、どのような技術・スキルが有効か、を自社内で綿密に纏め、顧客への売込みを行う。同業他社との差別化が必要であり、見出せなければ食込みは難しい。

(3)情報の一元化への取り組みと自社優位性を担保した取り組み
前述の通り、安定した需要を確保する上で、情報の一元化への取り組みは不可避であると考える。有効な情報を共有し、安定需要獲得に向けた取組と、自社の優位性を明確にした顧客の エンジニアリングチェーンの製品設計への食込みを主眼に置いた取り組みが重要である。

図:デジタル空間(IT)を活用した「ものづくり」
-デジタル空間の活用で各工程の効率化・期間短縮への期待-
図:デジタル空間(IT)を活用した「ものづくり」
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*今後のものづくりにおいては、デジタル空間(IT)の活用がますます加速する。
出典) 藤田英司(三菱電機株式会社 FAシステム事業本部e-F@ctory戦略プロジェクト)

2016年9月26日掲載

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