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情報家電の現状と展望

いま、とても売れているデジタル家電とは何か?素朴な疑問からはじまり、それぞれの商品カテゴリ毎にアナログ時代のとの進化のレベルを検証する。さらに通信のデジタル化と融合することで今後どのような社会変化が起きようとしているのか?少しづつ現れているデジタル社会へのイノベーションの萌芽を見つけなから、後の章につづくためのイントロダクション的役割を担う。

2004年11月14日 デジタル家電が情報家電にならない!

日本はブロードバンドインフラ(ADSLやFTTH,CATVインターネット)の普及の観点や利用料金の安さを諸外国とくらべれば世界最先端でしょう。しかしこのインフラの活用している機器は?と問われたら、それは間違いになくパソコンによる接続が大半であると思います。残念ながらデジタル家電を情報家電としてブロードバンド端末として利活用するにはまだ利用環境が未成熟であると言わねばならないと思います。これらの原因には様々な意味での障害が存在しているからと考えます。

まず挙げられるのは通信キャリアと家庭内ネットワークを結ぶ接点にいるルータです。そしてブロードバンドルータの諸設定がISP毎に異なり、接続手順についての標準化が図られていない点であるといえます。あるいはその設定の仕方が難しいからともいえます。
ルータというものの起源は米国DEC社のミニコンを出自とするもので、今は弁当箱のサイズですが、以前はミニコンやWS等の高額なコンピュータが処理をしていました。ルータに搭載されたOSとしてもUNIXが利用されていたもので、現在のルータOSもUNIXからTCP/IP通信以外に不要な機能をどんどん省略して現在に至っています。

ですが・・・・今では使い勝手の向上から、ルータにさまざまな機能を追加していく傾向があります。家庭内のPCに対してIPアドレスを割り振る機能や外部からのハッキングに対するセキュリティ機能、簡単なWebサーバをたてる機能など、ほとんどパソコンなみの機能が実装されつつあり、この機能開発競争も小型ルータの世界では始まっています。インターネットのオープン性により、一定の相互接続基準を満たすことの出来るルータであればどんな会社もルータを作ることができるためです。

これらの機能や利用方法、設定の仕方をすべて解説しようとするとWindows入門の本なみのボリュームになると思います。しかし、現在、市販されているルータではマニュアルは簡素化され、ADFでCDで配布されている形式がほとんどです。
これは著しくパソコン利用者に偏ったブロードバンド利用環境ではないでしょうしょうか?

ほかにも難点があります。薄型TVやDVD-HDレコーダを購入時に添付されるマニュアルを調べたのですが、大手通信キャリアが提供するIPサービスの接続手順は記載されていますが、それ以外のISPの接続手順については記載いません。また、家庭内での利用環境は必ずしも同一でないため、家庭内LANを組めるパソコンユーザーであれば簡単にローカルアドレスネットワークの設定が思いつくかもしれませんが、これは情報家電だけを購入した消費者にとっては難関であると考えられます。

ちなみに都内の複数の家電量販店へ行った際に薄型TVの「Tナビ」やDVD-HDレコーダのEPG利用の実演をお願いしたところ「この売り場にはLANがないため、実演はできない」ということもありました。

これらを踏まえると、やはり、薄型TVやDVD-HDレコーダもまだアナログ時代の「TVはTV、ビデオはビデオ」という呪縛を抜け出してきていないと思います。これはメーカーの啓蒙活動だけでは拭いきれない「今後の日本人のライフスタイルのあり方」という課題があるとおもいます。

そこには「消費者、メーカー、販売店、通信キャリア、コンテンツ情報産業」それぞれの活動領域(事業領域)にうっすらとした隙間があり、それぞれが「相手がその隙間を埋めてくれるだろう」という期待で動いているという姿があるのではないでしょうか?

もちろん、「パソコンではなぜ成功しているのか」という観点に振り返りますと、消費者に対して、インターネットに情報家電を接続させるためのインセンティブ開発も不足しているから・・・という点もあります。
しかし、パソコンの成功は「パソコンの周りは、ほとんどがアナログ機器であり、インターネット(デジタル社会環境)へのアクセスが出来たのはPCだけだった!」という先行者の特権もあったからだと思います。

「消費者への利便性の向上」と「魅力ある機能のネットワークからの提供」がデジタル家電が情報家電へ進化できる勝負どころではないかと考えております。

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2004年11月14日掲載