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総論

ここでは、報告書II「基本的な戦略」について、執筆者の村上敬亮情報政策課長補佐、森川毅情報経済課係長が解説します。ここでは、基本的に報告書第II部で論じている、戦略Iとしての、新しいイノベーションを核とした収益モデル構築への戦略、そして戦略IIとして、従来から強みを発揮してきた部分をどう伸ばしていくかについて、議論を進めていきます。

2004年11月14日 「何が出来るか」派vs.「道具」派

前回、日経デジタルコアでの討議をご紹介させていただきましたが、実は、その前日の月曜日の晩に、ネットを活用したマーケティングをしている方々などを中心に「裏審議会」?的なイベントをしてみました。
月曜日の内容については、参加者のご了解を得てから匿名でご紹介しようと思っていますが、この月曜日の集まりと、火曜日のデジタルコアの議論があまりに対照的で面白かったので、その点について紹介させていただければと思います。

月曜日の集まりは、どなたに来てくださいと村上が指定したわけではありません。普段、いろいろ教えていただいているネットコミュニティサイトの方やネットマーティングをされている方に、それぞれが関係されているML等でイベントの紹介をお願いをして集まっていただきました。約30名くらいです。結果としては、約半数を女性が占め、家電メーカからご参加いただいた方々も、どちらかというとマーケティングや企画系の方が中心でした。

一言で申し上げると、月曜日の議論は、「情報家電で何が出来るか」という話が中心となり、火曜日の議論は、「どの情報家電が有望か」という議論が中心となりました。火曜日の議論にも当然女性の識者はいらっしゃったわけですが、途中で両者の対照性に気づき、その内容を火曜日の最後の方で紹介したところ、女性の識者から、「男は道具にしか興味がない。女はそれで何が出来るかにしか興味がない。」といった趣旨のコメントをいただきました。けだし、名言・・・。それはそのまま、月曜日と火曜日の議論に当てはまるなあ~と、その場で感じ入った次第です。

例えば、月曜日の議論では、ホームシアターが話題になると、最初の議論は、「旦那と子供が家に居着くホームシアターは迷惑」という意見が紹介され、その次に、「子供が大人しくしているホームシアターは有り難い」という意見が出され、最後に、「米国で平面パネルが売れないのは、米国人が画質にうるさいからではなくて、部屋を暗くして、プロジェクターが降りてきて、という非日常性が受けているから。技術の問題ではない。」という締めがなされました。ここが大切な所なんですが、別にホームシアターが奥様方にとって有り難いか、有り難くないかということに白黒をつけることが大事なのではなく、どういうことが現場で求められているのか、また決してそこでは技術の優劣だけが物事を決めているわけでもない、ということを正確に理解することだと思います。一言で言えば、「技術の使われ方を深く理解する」とでも言えるのでしょうか。

他方、火曜日の議論では、例えば、「白物は情報家電足りうるか」→「製品寿命の長い白物は、技術進歩の早さと相互運用性の確保を考えると、ネット化には不向き。」→「では白物を、PCのようにハードとソフトをアンバンドルしソフトで相互運用性の確保とバージョンアップをすることは可能か」→「それでは家電の得意としてきた高信頼性と高品質が崩れてしまうのではないか。」といったような議論が展開されました。つまり、「技術進歩を道具として受け止めてくれるネット家電のプラットフォームはいずれか?」という話に終始したわけです。

綺麗にまとめれば、どちらも重要な議論だと思います。月曜日だけが良いとも、火曜日だけが良いとも思いません。一番の問題は、月曜日組と火曜日組とかがフラットに話し合う機会がとても少ないということではないでしょうか。月曜日は月曜日組だけで悩み、火曜日は火曜日組だけで悩む。実は、家電メーカの中でもそういう事態が起きてるんですよね・・・なんてご紹介もありました。Blogで紹介させていただいたレポートも、そういう意味では火曜日の議論にやや偏重してます。産業政策として考えると、今後どうやって月曜日組の人達に、火曜日の議論に参加していただくかが、大きなポイントになるのかなあと正直思っています。

今や、民間の皆さんも、本当にビジネスをする気のある方は、役所にお金を貰うことを期待しているわけではないと思います。むしろ、今後の経済産業省の役目の一つは、こういう、市場ではなかなか繋がりにくい知見をうまく繋げていくお手伝いをすることではないかと思っているのですが、実際には、なかなか難しいですね・・・。月曜日組の詳細は、また後ほど。。。村上でした。

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2004年11月14日掲載