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総論

ここでは、報告書II「基本的な戦略」について、執筆者の村上敬亮情報政策課長補佐、森川毅情報経済課係長が解説します。ここでは、基本的に報告書第II部で論じている、戦略Iとしての、新しいイノベーションを核とした収益モデル構築への戦略、そして戦略IIとして、従来から強みを発揮してきた部分をどう伸ばしていくかについて、議論を進めていきます。

2004年10月24日 作り手と使い手の融合

村上です。森川くんに対抗して、僕も書かないと・・・

「新・三種の神器」がこれだけ売れる。携帯電話、PC、デジカメ、みんな当たり前のように使うようになって、デジタル機器へのアレルギーも相当下がってきた。これって、もう忘れちゃいましたけど(苦笑)、昔、「IT革命」なんて言ってませんでしたっけ?
なのに、産業としては、利益率をもっと上げたい、将来展望が苦しいなどと言っている。このクリスマス商戦に向けては、100万円前後の商品がシニア向けに売れるようなのでまた状況は違うのかもしれませんが、しかし、しかし・・・。

僕は、その背景に大きな変化があるような気がする。消費生活の成熟化に伴い、「大量生産→流通・販売→大量消費」っていう図式自体が壊れ始めてる、ってことがあるように思うんです。その端境期に立つのが、売れても儲からないのが情報家電?

もちろん、大量生産・大量販売は重要なことです。今回のレポートでも書いたように、海外の市場も含めて量で完成品市場を抑えないと、上流の強みも生きてこないし、次への投資資金も稼げない。でも、大切なことは、個々のユーザを直接掴むこと。

自動車の世界がやはり参考になると思うんですけれど、こちらは、他方でクラウンを月間販売ラインキングベスト10にいれちゃうなんて、神業みたいなことをやってますけれど、その苦労の向こう側ではリッターから順番にクラウンにあげていく、だけじゃなくて、今や、BBはあるわ、アルテッツアはあるわ、色々な車を用意してますよね。ホンダさんなんかも、ホビオ・トラベルドッグバージョンみたいなことをやってしまう。
他方、個別化した商品のようでありながら、ベースとなるプラットフォーム、エンジン、部品は共用化して大量生産と同じ効果は維持してるんだけど、高額商品に辿り着くまでお客さんがライバルメーカーや外車に逃げないように、そのお客の個性や志向に合わせた商品展開を個々に繰り広げていらっしゃる。車を使った生活作り、ということに自体に、ITSやカーナビなんかもそうですが、すごく一生懸命投資して、マーケティングも、消費者の声のフィードバックもやっている。

何より、車に対して付加価値をつけているのは、供給サイドの技術ももちろんありますが、ユーザサイドの消費者の声そのものが付加価値なんだ、その付加価値は消費者に対してきちんと還元するんだ、みたいな部分が、徹底してると思うんですよね。

全然別の例ですけれど、インターネットが何でこんなに急速に普及したのか。それってやっぱり、「リンク」の機能のおかげだと思うんですけれど、もしこれが、ここのWebページの情報提供者の事前承認制になっていたら、ここまでインターネットは普及していたでしょうか?もちろん、シュミレーションしたこともないので確たることは言えませんが、答えはノーでしょう。このBlogだって、トラックバックが勝手に晴れるからこそ付加価値を生むんで、こういう世界では、情報提供者だけが付加価値を積んでいるのではない。むしろ、それを見つけて紹介しているユーザの方にこそ、付加価値の源泉があるといっても過言ではないんだと思うんです。

作り手と使い手という二分法が通用しなくなる。実物経済の量の論理が行き詰まり、市場は徐々に、「作り手と使い手が融合する時代」に入る。使い手の顔が見える商品・サービスの開発と生産・流通の最適化が両立しない限り、利益の上がる産業の構築が出来ない時代に突入する。そういうことになってきているんじゃないかと思うんです。それができるのは、生産現場からマーケティング現場から流通まで、ITを使った徹底した情報資産の共有・活用が出来るからこそ。これこそ、「IT革命」じゃないのかしらと。

ちょっと乱暴な説明だったので、引き続き、この点について、コメントしていきたいと思います。

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2004年10月24日掲載