■宮城文書回答

 

1)全体的な印象

日本代表チームが決勝トーナメントに進出し、その歴史に残る試合がこの宮城で開催されるなど、県民に大きな夢と感動を与えてくれたと思います。また、開催地という事だけではなく、イタリア代表のキャンプ地が仙台市ということもあり、宮城・仙台の情報を世界に発信する事ができました。県としては、ボランティアの活躍や社会参加が高まったこと、また、県内各地で様々な国際交流などの成果もありました。更には、集団災害緊急医療体制や危機管理連絡体制の整備を通して関係機関のネットワークもできました。これに限らず、ワールドカップサッカーがもたらした様々な結果は、今後、宮城県によっていい意味を持ってくるものと期待しています。

自己採点
「90点」
減点の10点は、チケット販売の遅滞や空席が発生したチケット問題があったため。

重要と思われる項目(3点)
住民の参加意欲向上、地域ホスピタリティの向上、地域の国際化

2)開催地立候補時点、決定直後、終了後の各々でWカップへのイメージ、考え方の変化の有無

立候補時点における、世界の一流選手の競技を堪能できるだけでなく、大会を通じたサッカーの普及強化、世界の人々との相互交流、友好促進や本県経済、文化への大きな波及効果への期待など、世界との交流を目指す本県に様々な好影響をもたらしてくれるという考えについては終了後も一貫している。開催地決定の段階において、韓国との2カ国開催となったが、韓国との定期路線を有する仙台空港のメリットなどから、本県開催の実現に向け誘致活動にも弾みがついたように思う。
当然、決定後の大会への関心度は、県民もそれ以前とは比較にならないほどの高まりを示した。

3)成果の自慢(3点)

第一に我が県で開催できたこと自体が自慢です。日本代表の決勝トーナメントを含め3試合、海外の5チームが本県で対戦し、さらにイタリアを含めると6カ国チーム、それにサポーターが来県しましたが、それぞれの国では試合に限らず開催地・キャンプ地である「宮城・仙台」についてもメディアへ紹介されたことと思います。また、関係者のみならず県民もサッカーパークでの国際交流など貴重な体験ができ、有形無形の財産を残したと思う。
第二に前年の夏季・秋季国体の際もそうでありましたが、今大会を通じて1600人ものボランティアが協力してくれたこと。サッカーなどのスポーツのイベントに限らず、今後、様々な場面で住民の参加が望まれますが、その意味でも手ごたえを感じました。
第三に無事終了できたことです。フーリガンやテロ等に備え、集団災害対策として医療機関、消防、警察、自衛隊等でプロジェクトチームを作り対応しました。45,000人を超える観客の輸送や宿泊についてもできる限り情報提供に努めました。これらが、円滑に運営され大きな事件・事故もなく終了できたことです。

4)事業の成否又は事後評価、効果測定及びその公表等の重要性

開催自治体では多額の予算を投入し、また、開催自治体以外からも宝くじ収入をワールドカップの費用に優先配分する協力を得ております。その意味でもJAWOCが中心となり事業評価なりを公表していくことが重要であり、それが義務、責任であると考えます。

5)直接・間接総費用

2,890百万円

経費の性格
スタジアムについては、平成13年度開催された国体のために整備されており、上記の費用は「イベント参加費用」のみを計上している。ただし、スタジアムについてはワールドカップ仕様とするため経費を上乗せしており、今後、サッカーに限らず各種スポーツ大会やイベント、県民への開放など多面的な活用を図ることとしています。

6)ワールドカップ関連収支についての感想

FIFAとの調整や為替との関連で収入見込みが開催直前まで分からないため、JAWOC負担金の追加があるなど、国際的なイベントの収支見込の難しさを感じました。本県の予算規模から見れば多額の支出ではありましたが、成果の自慢でも掲げたように、費用以上に有形無形の財産を得られたことを考えれば決して無駄な支出ではなかったと確信しています。

7)住民自治参加意識への貢献

成果でも掲げたようにボランティアの積極的な協力が得られ、また、次の市民レベルの交流でも記しているがイタリア代表チームの支援のため市民を巻き込んだ組織ができるなど、今回のワールドカップサッカーは住民の自治参加意識への貢献を一歩も二歩も前進させる契機となりました。

8)市民レベルの国際交流

交流の場となるサッカーパークを仙台市中心部の公園に設置し、市民のみならず対戦国のサポーター同士との交流も図れました。また、仙台市をキャンプ地としてイタリア代表チーム“アズ−リ”への練習環境の整備などの支援のために、市民、企業、サッカー関係団体等で組織「フォルツァアズーリクラブ」が設立され、滞在期間中は支援に止まらず交流の場を設置されるなど国際交流にも寄与しています。将来的にもイタリアサッカー協会との交流を図るため、新生「フォルツァアズーリクラブ」に衣替えをし活動を継続しているところです。

9)交通・情報インフラ、宿泊施設、商業施設、文化財施設等で不足しているもの

提示された中で最も心配したのが、交通アクセスです。会場が仙台市の東隣の利府町の住宅団地内にあることから、最寄の公共交通機関などからのシャトルバスによる輸送に重点をおいて対応しました。また、ワールドカップサッカー大会の直前には東北縦貫自動車道路から分岐し、仙台空港からも直接アクセスできる有料道路のインターチェンジが会場となった宮城スタジアムの隣接地に完成し、計画に沿った輸送が実現できましたが、仙台駅からのアクセスが悪いとの不評も聞かれたことも事実です。
情報インフラについては、既存のインフラで対応ができないわけではありませんが、IT革命が進展する中にあって、県内でも地域間格差の解消や情報産業の集積を目指し、高速情報ネットワークやインターネット・エクスチェンジの設置を目指しています。 商業施設については、仙台市中心部が商店街が集中していますが、海外旅行客への配慮は今回の大会を契機にさらに充実が望まれます。

10)人材

今回のような国際的なスポーツイベントは本県にとって初めてであるが、ワールドカップの前年には、夏季・秋季国体を開催しており、スポーツイベントのノウハウは職員や関係団体等にも蓄積されていました。さらにFIFA、JAWOCとの連携や過去の大会の情報収集などを通して人材が育ってきており、限られた人員の中でよく役割を果たしてくれたと思います。イベントのために日ごろから人材を育成する余裕はありませんが、組織として人的なネットワークやノウハウを蓄積し引き継ぎ、共有していくことが重要と思います。

11)ベガルタ仙台の貢献、今後の方針

昨年はベガルタ仙台がJ2からJ1に昇格し、ベガルタ仙台の活躍は県民に夢を与えてくれています。ワールドカップサッカーが、そのJ1昇格の年に開催されたこともあって県民の関心も熱狂的なものがありました。
仙台市がキャンプ地に決定され、また、イタリア代表チームがキャンプ地として選んだ背景としては、プロサッカーチーム「ベガルタ仙台」の存在とそれに伴う施設の充実が挙げられます。今年の6月上旬には、1周年記念事業としてサッカー協会が主催、フォルツァアズーリクラブが共催し、イタリア・セリエAキエーヴォ・ヴェローナとベガルタ仙台との国際交流試合も開催されるなど大いに貢献しています。
本県におけるJリーグチーム設立、設立後の支援については、宮城県も積極的に支援してきていますが、Jリーグチームはホームタウン制であることから、県が積極的に関与することよりも、チームが市民や民間団体等と一体となって発展することが望ましいと考えています。

12)大会終了後の国際的PR活動の継続

今大会を通じて宮城の知名度が上がったと思います。それを最大限に生かしていくということを考えていくべきだろうと思っております。具体例を挙げれば本年1周年記念事業として、韓国のチームと本県のチームとのサッカー、フットサルの交流試合やベガルタ仙台とキエーヴォ・ヴェローナとの交流試合なども国際的PR活動に寄与することと思います。