■全体のまとめと課題提案

 

今回の調査によって明らかになったのは、

1) 全ての自治体において、大会の「盛り上がり」を大きな成果としてあげている。このことから、「Wカップ開催」自体の成果と、「開催による地域の振興」の成果が混同される傾向にあることが判明した。特に「大会開催」運営担当部署にとって、成功・不成功のメルクマールは第一に前者の「イベント自体の成功」であり、その部署が同時に「地域振興」全体を課題として負うのは無理ではないか、と思われた。

2) 「Wカップ開催」とは、「地域振興という成果」にとっては手段の1つである。従って大会開催の成功は「成果」達成にとって必要不可欠ではあるが、それ自体で「成果達成」の十分条件ではない。「大会開催という制度」を備え、さらに「大会開催の成功という制度の稼働」を確保したら、「地域振興という成果」を達成するためには何が必要なのか、といった構造的かつ戦略的な視点で捉えているところは稀少である。

3) しかしながら、「大会開催という制度稼働」を「地域振興という成果」にどう結びつけるかこそが、行政のプロとして望まれるもののはずである。でなければ、民間のイベント業者が運営を行った方が、効率は高いはずだ。(この場合の効率とは、飽くまでイベント開催を目的とした場合のものである。)

4) 開催自治体の内部において、担当部署による事後評価の中心は、「何を行ったか」であり、しかも「盛り上がり」や「円滑な運営(で無事に済んだ)」といった「大会開催自体の成否」に関するものに偏っている嫌いがある。つまり大会開催という本来は「地域振興」にとって手段であるべきものが、自己目的化してしまっている。一般に官僚組織は自分の仕事を自己目的化する傾向があるが、Wカップの開催もその例外ではなかった。この点を避けるためにはよほどしっかりしたフレームを設定し、事後評価とその情報開示をフレームの中にビルトインさせて置く必要がある。(アンケートの設問第1問において「事後調査実施」について問うているが、「実施」と回答したのは2カ所のみであった。)

5) 達成された「成果」としてあげられたものには、事前に期待していなかった望外の事柄が散見される。静岡の石川知事が指摘した、「行政と民間の新たな関係構築の予行演習ができた」ことなどは、確かに大きな成果には違いないが、それは事前に期待し、計画されたものではなかった。逆に事前に予想されたものであれば、更に成果は大きかったにではなかっただろうか。「スポーツのビッグイベントが、地域振興にどう貢献するのか」について真摯な検討をし、潜在的な可能性をできるだけ顕在化させるのが当該地域の行政の責任であるならば、今後はこの調査を初めとした様々なケースを研究し、できる限りの準備を怠ってはならないだろう。

6) 以上で明らかになったのは

 1.「国際スポーツイベントの開催」を「地域振興」に結びつける戦略的視点の欠如
 2.事後評価の必要性に対する感覚の希薄さ

である。
 従って今後必要なのは、

 1.国際スポーツイベント開催地において、開催によって達成すべき「地域振興の具体的内容の明確化」
 2.達成された「成果」の事後調査と評価、及び結果の公開

であり、これらを制度化する必要があると思われるのである。