世界の視点から

自動化は職業にどう影響しているのか:テクノロジー、雇用、スキル

James BESSEN ボストン大学法科大学院講師

一般に、コンピュータによる自動化は大規模な失業につながると考えられている。しかし、この考え方では、需要の変化と職種間の雇用代替を伴うダイナミックな経済の反応が考慮にいれられていない。本稿は、詳細な米国の職種別データを用いて、自動化がもたらす雇用成長率への影響を検証した。その結果、これまで、コンピュータを利用する職種の雇用成長率は比較的高く、一方でほとんど利用しない職種ではコンピュータ関連の雇用喪失がより大きいことがわかった。自動化に伴う真の課題は、新たなテクノロジーを使いこなすスキルをもつ労働力を開発することである。

自動化は、製造業に従事するブルーカラー労働者のみならず、ホワイトカラーや専門職にとっても関心事となっている。人工知能を利用するものなど、新しいコンピュータプログラムは経理や銀行の窓口係、事務職などの仕事を奪いつつあるからだ(Brynjolfsson and McAfee 2014)。この代替が技術的失業を生み、世界同時不況からの回復が遅れている原因だという見方もある(Ford 2015)。将来についても、Frey and Osborne(2013)は、「米国の総雇用の47%は(中略)おそらく10年か20年で(中略)潜在的に自動化できる」と予測している。より控えめな予測もあるが(Autor 2015, Arntz et al. 2016)、すでにコンピュータの自動化が失業を招いており、今後さらに深刻化するという見方を背景に、最低限所得保障などの新たな政策を求める声が上がっている(Ford 2015)。

しかし、実際にコンピュータの自動化によって雇用の大規模な純減が生じているのだろうか? 残念ながら、自動化に関する一般的な議論は、綿密な経済分析や実証的エビデンスに基づいていない場合が多い。筆者は最新の論文で、近年の自動化が米国の雇用成長率に与える影響を職種別に推計した(Bessen 2016)。一般的な議論ではほとんど無視されている基本的な経済の相互作用、たとえば自動化による製品需要や職種間の雇用の代替への影響などを捉えたモデルを使用した。

自動化の経済学の基本

まず自動化とは何か、そしてそれは雇用にどう影響するかを明確に理解することから始めるのが肝要である。自動化により機械が職務の一部、または全部を遂行するため、その職務を遂行するのに必要な人間の労働は減るか失われる。しかし、新しい技術が労働力に悪影響を与える可能性があるのはその点だけではない。新技術によって製品が陳腐化する可能性がある。たとえば、自動車の登場によって馬車製造業の雇用は失われたが、同時に車体メーカーの雇用が作り出された。また、技術は業務体系を変える可能性がある。たとえば、通信技術は分散化やアウトソーシング、オフショアリングを促し、ある集団から他の集団に業務を移転させる。セルフサービス技術(空港の自動チェックイン・発券機など)は業務を消費者に移転させているし、情報技術は新しい市場の創出につながっている(Airbnb、Uberなど)。他の技術的変化も悪影響を及ぼし、一部の労働者の雇用を奪う可能性はあるが、全体として大規模な雇用喪失を招く理由はない。新しい仕事が生まれ、古い仕事が消えるだけのことである。一方、自動化は1単位生産するのに必要な人間の労働を機械が減らすため、雇用の純喪失につながる可能性がある。

また、人間の仕事が機械によって完全に奪われることを懸念する議論も多くみられる(たとえばFrey and Osborne 2013)。しかし、実際には多くの場合、自動化は「部分的」で、一部の業務が自動化されるに過ぎない。たとえば、1950年以降の広範にわたる自動化にもかかわらず、1950年の国勢調査に記載されていた270の職業のうち、自動化によって消滅した職業はエレベータ操作係だけのようである(注1)。一方、多くの職業が部分的に自動化された。

経済的な影響が大きく異なることを考えると、両者の違いは重要である。ある仕事が「完全に」自動化されるのであれば、自動化は必然的に雇用を減少させることになる。しかし、「部分的に」しか自動化されないとすれば、実際には雇用が増えるかもしれない。その仕事の「大部分」が自動化されても同様である。その理由は基本的な経済学に関係している。たとえば、19世紀には布を織るのに必要な労働の98%が自動化されたが、織工の雇用数は逆に増えた(Bessen 2015)。自動化によって織物の価格は低下し、そのことによって需要は押し上げられ、その結果、技術による省力化にもかかわらず、雇用の純増加が実現したのである。

コンピュータの自動化についても同じような需要反応がみられる。たとえば、現金自動預け払い機(ATM)による銀行窓口係への影響である。ATMは1990年代末から2000年代初頭にかけて広く普及したが、銀行窓口係のフルタイム相当の雇用は増加した(図1を参照)。なぜ雇用は減らなかったのか? その理由は、ATM導入によって銀行の各支店の運営コストが抑えられたため、より多くの支店を開設できるようになり(需要は弾力的だった)、当初の窓口係の雇用減少分を相殺したからである(Bessen 2016)。

図1:米国における銀行窓口係のフルタイム相当の雇用とATM設置台数
図1:米国における銀行窓口係のフルタイム相当の雇用とATM設置台数

もちろん、自動化が部分的でも、ある職種の雇用が減少する可能性はある。需要が価格に対し非弾力的な場合、雇用喪失分が需要の増加によって相殺されることはないだろう。また、自動化が企業内、産業内の職種代替を招く場合もある。たとえば、現在、電話交換手は減ったが、受付係は増えた。植字工は減ったが、グラフィックデザイナーやDTPオペレーターは増えた。コンピュータを扱うグラフィックデザイナーは植字工より生産性が上昇したため、自動化に伴い、植字工からグラフィックデザイナーに業務がシフトしたのである。

雇用需要の伸びに関する推定値

以上の点を勘案し、筆者は、需要の変化と産業内の職種代替を考慮に入れ、産業全体の職業別雇用需要の単純モデルを構築した。ここではカギとなる独立変数として、各職種、各産業の労働者がコンピュータを利用する頻度を測定した。これらのデータは人口動態調査の追加資料から得た。また、他の条件が同じ場合、コンピュータの利用頻度が高い職種は業務の自動化の度合いが高いと仮定した。従属変数は、職種別、産業別の相対的な雇用成長率である。

推定値は、一般的に考えられているコンピュータの自動化の影響と相反するものであった。まず、コンピュータを利用する職種はそうでない職種と比べて、雇用成長率がむしろ高い。標本平均では、コンピュータの利用に伴い、職種の雇用が年間1.7%増加している。つまり、銀行窓口のケースは例外というよりむしろ典型的といえる。

2番目に、職種間の雇用代替効果は著しい。同一産業内にコンピュータを利用する別の職業がある限り、雇用成長率は低下する傾向がある。つまり、機械が人間に取って代わるということではなく、コンピュータを使うグラフィックデザイナーが植字工に取って代わったように、機械を使う人間が他の人間に取って代わるということである。

雇用の代替効果はおおむね雇用の増加効果を相殺する。標本平均で両者を計算すると、コンピュータの利用によって雇用は増加したが、その効果は年間0.45%と小さい。この関連性は必ずしも因果関係ではない。他の要因によってコンピュータを利用する職種が成長した可能性もある。しかしながら調査結果が示したことは、コンピュータの自動化と大規模な雇用喪失は関連していないということである。

コンピュータの自動化と所得格差

とはいえ、コンピュータの自動化と労働力の大規模な配置転換には関連性がみられる。自動化は雇用全体に大きな影響を与えているようにはみえないが、一部の職種では大規模な雇用喪失が生じ、別の職種では雇用は増加した。特に、低賃金の職種では雇用が失われる一方、高賃金の職種では雇用が増える傾向にある(図2参照)。高賃金の職種ではコンピュータの利用頻度がより高いため、低賃金の職種の仕事を代替できる。

図2:コンピュータの自動化による職種別の雇用成長率への正味の影響(1980年の職種別平均賃金)
図2:コンピュータの自動化による職種別の雇用成長率への正味の影響(1980年の職種別平均賃金)

低賃金の職種の労働者が簡単に高賃金の職種に転職できない場合、賃金格差によって経済的格差が大幅に拡大する可能性がある。たとえば、低賃金労働者はコンピュータを使う仕事の機会に恵まれないか、必要とされるスキルがないのかもしれない。筆者のデータは、これに当てはまりそうなエビデンスを示している。コンピュータの使用頻度が高い職種では、職種内の賃金格差が拡大しつつある。新たなスキルを習得する労働者はより高い給料を得られるが、すべての労働者が学ぶ機会や能力に恵まれているわけではないからだ。また、コンピュータを利用する職種では、大学の学位が必要でない銀行窓口などの職種でも、大卒労働者の割合が大きくなる傾向がみられる。

結論

コンピュータによる業務の自動化によって、必ずしもコンピュータを利用する職種の雇用が失われるわけではない。むしろ、これまで、コンピュータを利用する職種のほうが雇用の成長率が高い。逆に、コンピュータ関連で雇用を失われているのは、コンピュータをほとんど利用しない職種である。

コンピュータの自動化によって必然的に大規模な雇用喪失がおこるという考え方は、自動化へのダイナミックな経済の反応、すなわち需要の変化と職種間の雇用代替を伴う反応を考慮していない。もちろん、必ずしも最近の事例をもって将来を予測できるわけではなく、新しい人工知能技術は異なる影響をもたらすかもしれない。実際、自動織機といった過去の技術は当初こそ多くの仕事を生み出したが、最終的に需要の価格弾力性は低下し、その後の技術革新は雇用喪失につながった。コンピュータの自動化も将来、雇用喪失を招く可能性はある。

しかし、将来の問題ばかりに目を向けても現在の政策の指針にはならない。我々のエビデンスは、今のところコンピュータは、雇用の純喪失を引き起こしてはいないが、低賃金の職種の雇用は失われつつあり、経済的格差を拡大させる可能性があることを示している。これらの労働者が給料の高い新しい仕事に転職するには、新しいスキルが必要である。新しいテクノロジーを使いこなせるスキル獲得に向けた労働力開発こそ、コンピュータの自動化が投げかける真の課題である。

本稿は、2016年9月22日にwww.VoxEU.orgにて掲載されたものを、VoxEUの許可を得て、翻訳、転載したものです。

本コラムの原文(英語:2016年10月24日掲載)を読む

脚注
  1. ^ 他はサービス需要の変化(寄宿舎管理人)や技術の陳腐化(電信係)など、さまざまな理由により消滅した。
参考文献
  • Arntz, M, T Gregory and U Zierahn (2016) "The risk of automation for jobs in OECD countries: A comparative analysis," OECD Social, Employment and Migration Working Papers, No 189, OECD Publishing, Paris.
  • Autor, D H (2015) "Why are there still so many jobs? The history and future of workplace automation," The Journal of Economic Perspectives, 29(3): 3-30.
  • Bessen, J (2015) Learning by Doing: The Real Connection Between Innovation, Wages, and Wealth, Yale University Press.
  • Bessen, J (2016) "How computer automation affects occupations: Technology, jobs, and skills," Boston University School of Law, Law and Economics Research Paper 15-49.
  • Brynjolfsson, E and A McAfee (2014) The Second Machine Age: Work, Progress, And Prosperity In A Time Of Brilliant Technologies, New York: WW Norton & Company.
  • Ford, M (2015) Rise of the Robots: Technology and the Threat of a Jobless Future, New York: Basic Books.
  • Frey, C B and M A Osborne (2013) "The future of employment: How susceptible are jobs to computerisation," Working Paper.

2016年11月15日掲載

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