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企業内の階層における男女差
男女のキャリアはどのように異なり、そしてその理由は何か?どのような政策を講じればこのような格差を軽減できるのか?

Antti KAUHANEN
フィンランド経済研究所

概要

男女間賃金格差の主な原因は、男女で従事する仕事が異なることである。このような性別職務分断が起きる一因は、企業内の階層におけるキャリアの男女差である。研究によると、男性と女性のキャリアは、労働市場への参入直後から分岐し始め、その後のキャリアアップによって、格差がさらに拡大するという。男女間賃金格差はおおむね、このようなキャリアアップの違いによって説明できる。階層における男女差を小さくするために効果的な政策を設計する上で、男性と女性のキャリアがどのように異なるのか、そしてその理由を理解することが必要である。

The Probability of Promotion by Gender and Experience

主な研究結果

  • 初期の配置、昇進率、キャリアの各節目における賃金上昇額に存在する男女差を解決するため、実行可能な政策上の選択肢が多数、存在することが研究によって明らかになった。
  • 「キャリアの成果に男女差が生じる主な原因は、学歴、キャリアの中断、労働時間、心理的要因である」との研究結果に基づき、適切な政策を設計することができる。
  • 主な政策手段は、教育と家族休暇に関わる政策であり、学歴とキャリア中断に関しての男女差を軽減することを目的としている。
  • 効果的な政策を設計することが困難なのは、キャリアにおける男女差をもたらす原因の相対的な重要性について、意見が一致していないからである。
  • 具体的な政策介入がキャリアの男女差の軽減にどのような効果をもたらすかを示すエビデンスはほぼ存在しない。
  • ほとんどの政策は、その効果を発揮するまでに時間を要する。たとえば、特定の研究分野における男女差を軽減するための政策が実際にキャリアの成果に反映されるまでには、時間を要するだろう。

本稿の主旨

研究によると、男性のほうが企業内の比較的高い階層からキャリアをスタートしており、昇進する可能性も高いという。キャリア上のこのような違いが男女間賃金格差を招く重要な要因の1つである。キャリア上の男女差は、労働市場参入前後に男性と女性がそれぞれ異なる選択をすること、そして労働市場において両者の扱いが異なることを反映している。これまでの政策は、労働市場における差別を減らすことに焦点を当ててきた。しかしこれと同様に、キャリア断絶、労働時間、心理的要因についての男女差を削減する政策も重要である。

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本稿は、2017年5月にIZA World of Laborにて掲載されたものを、IZAの許可を得て、翻訳、転載したものです。

本コラムの原文(英語:2017年7月12日掲載)を読む

2017年8月1日掲載