RIETI経済政策レビュー9

『民意民力 公を担う主体としてのNPO/NGO』

  • 澤 昭裕 、経済産業研究所『公を担う主体としての民』研究グループ 編

北川正恭・元三重県知事は本書のなかで、「この国の制度が旧態依然とした昔からのパラダイムで動いているところに現在の閉塞感の原因がある」と述べる一方で、「新しい価値観をどう創造するか、というところでみんな模索を始めている」と、変化の兆しを指摘しています。本書では、その変化の担い手となるであろうNPO/NGOに焦点をあてて、彼らが日本を変える可能性を探っています。

とはいえ、客観的または学術的な分析を行おうというのではありません。本書に登場するのは、教育を変えようとする人、医療を変えようとする人、自らまちづくりに参加して、NPOのネットワークをつくった人、公務員としてNPOに関わった(あるいは関わっている)人、NGO研究の第一人者であり、自らもその活動に参加している人、ジャーナリストとして市民活動を追い続けている人など、多種多様な顔ぶれです。本書の言葉を借りれば、彼らは「日本の政治・社会を成り立たせている諸々の制度や習慣的思考を、もう一度根底から問い直そうとしている人たち」です。

現場で動いている彼らの発言から、「自ら実際に動く」とはどういうことなのかを考えさせられます。本書では、客観的な分析からは得られない生の情報に触れることができると思います。

(東洋経済新報社 佐藤朋保)