RIETI経済政策レビュー1

『バランスシート再建の経済学』

本書は「バブル崩壊後の10年間、財政拡大・金融緩和をフル発動したにもかかわらず、なぜ日本経済は『失われた10年』に陥ってしまったのか」という疑問に明快に答える。その答えは実に単純で「バランスシート問題に正面から取り組んでこなかったため」と結論付ける。

ここでいうバランスシート問題とは、「日本経済には過去の失敗の大きなツケがあちこちにたくさん残っている。そのツケをどうやって処理するか」である。つまり、このバランスシート問題は、銀行の不良債権の問題であり、企業や家計の債務過多の問題であり、政府の財政赤字累増の問題である。

提示される処方箋も明快である。持続的な経済発展を取り戻すために、どのような政策対応が必要なのか、幅広く検討しつつ、実行の道筋を示す。本書は、経済理論、実証研究、海外の事例研究、政策論の各分野について最新の成果を盛り込みつつも、かみ砕いた記述を心がけ、幅広い層の読者に役立つバランスシート問題の必携の「ハンドブック」になっている。

(東洋経済新報社 塚田紀史)