RIETI経済政策分析シリーズ5

『包括的地方自治ガバナンス改革』

地方分権の動きが強まり、地方でも「大いなる制度改革」が進みつつある。この動きは、部分的・単発的・独立的な動きではなく、既存のシステムとは異なる原理に基づいて地方自治を創造するような勢いを持つ改革になっている。「地方分権すべし」と声高に唱える議論は数多くあるが、そうした制度変化がどのように生じているのかを分析したものは少ない。

本書では、地方自治体の現場で実際に何が起きているかを、分権改革、NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)、住民自治という3つの基軸から、実証的に分析する。具体的には1990年代の包括的ガバナンス改革がどのようにして始まり、どのように普及・伝播し、さらに改革のトリガーとなったものは何かについて明らかにされる。

加えて、一大変化といえるグローバリゼーションやIT革命、財政状況の悪化などによって、地方自治の現場で何が生じたのかについても、実例をあげ詳述する。1990年代の地方行政改革を綿密に記録した本書は、今後長きにわたって貴重な資料として引用される基本文献となろう。

(東洋経済新報社 佐藤朋保)