夏休み特別企画:フェローが薦めるこの1冊'02

『経営学』『経営に終わりはない』『新約聖書入門ー心の糧を求める人へ』

新原 浩朗顔写真

新原 浩朗(上席研究員)

1)『経営学』 小倉昌男著 日経BP社 (1999年)
2)『経営に終わりはない』 藤沢武夫著 文芸春秋 (1986年 [文庫1998年] )
3)『新約聖書入門ー心の糧を求める人へ』 三浦綾子著 光文社文庫 (1984年)

『経営学』『経営に終わりはない』『新約聖書入門ー心の糧を求める人へ』表紙 私は本来、本を読むスピードが速くないうえ、ひとつひとつじっくり考えながら読む方なので、読む本をかなり選ぶほうだと思います。したがって、ベストセラーを追いかけて読んでいく感じではないので、最新刊というわけではありませんが、これならまだ読んでいない人は、絶対に夏休みに読んで後悔しないと保証できる本を、最近の自分の関心領域に近いところから3冊挙げたいと思います。
私は、この研究所ではここ3、4カ月、「日本の優秀企業の研究」と題して、特に経営者の能力に重点をおいて研究しています。無論、経営戦略論やリーダーシップ論、あるいは、経済学の産業組織論などで参考になる本もあるのですが、これらの本は、納豆のねばねばがとれてしまって大豆だけになったような印象を受ける本も少なくないので、まず2冊、充実した経営者自身の手による本を挙げます。

1)『経営学』 小倉昌男著 日経BP社 (1999年)
2)『経営に終わりはない』 藤沢武夫著 文芸春秋 (1986年 [文庫1998年] )

よく経営者の本は自慢話になって役に立たないという話を聞きますが、この2冊はそのようなことは絶対ありません。

1)は、私が自分の生き方の基準としても、帰依しているヤマト運輸の小倉氏(私の家の書斎には、いやがる小倉さんに無理矢理書いてもらった色紙が米国の音楽家、故レナード・バーンスタイン氏の色紙と並んで掛かっているほどです)の唯一の著書です。その情熱に対し、良質の小説を読んだ後のような感動を感じ、また、ひとつひとつ論証していく姿勢に数学書のような論理性を感じると思います。仕事に悩んでいる方、だまされたと思って読んでみて下さい。力が涌くと思います。

2)は、本田技研の創生期に、本田宗一郎氏とパートナーを組んで経営を担当した藤沢武夫氏の著書です。フラットな組織を始め、今日的課題の解法が既に彼によって熟考されていることに驚くだけでなく、今の経営を考えるときに役立つ本です。

3冊目は経営者、いや人間のありかたを考えるときに不可欠な、使命感、規律の問題を考えたいと思います。米国の議論に端を発して、コーポレートガバナンスの議論が盛んですが、米国でも本当に持続的に繁栄している企業の経営者は、強い規律を持っており、その源は宗教的な自己犠牲の精神にあるように思います。そこで「思い切って聖書を読んでみよう!」と思ったところで、解説なしでは大変だし、逐語的な解説書では専門的すぎる。ということで、3冊目は下記です。

3)『新約聖書入門ー心の糧を求める人へ』 三浦綾子著 光文社文庫 (1984年)

類書は何人かの著者のものがあると思いますが、私はこれが良いと思います。作家の三浦綾子氏が自分の体験を織り交ぜながら、聖書の解説を試みた本で、しっかりしています。私は、クリスチャンではありませんが、読めば何かが得られると思います。

新原 浩朗(上席研究員)