夏休み特別企画:フェローが薦めるこの1冊'02

  • 『システム障害はなぜ起きたのか:みずほの教訓』

    本書は、4月に起きたみずほファイナンシャル・グループの大規模なシステム障害について、その原因について徹底検証するとともに、そこから得る教訓を引き出すことを目的として書かれている。

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    "REINVENTING THE BAZAAR"

    著者は、スタンフォード大学ビジネススクール教授のジョン・マクミラン氏である。マクミラン教授については、彼のゲーム論の教科書・啓蒙書が日本語訳されていることもあり(『経営戦略のゲーム理論』有斐閣)ご存知の方も多いか...

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    • 鶴 光太郎(上席研究員)
  • 『中国の経済発展』

    中国では、改革・開放が進むにつれて、多くの経済学者は目の当たりに展開している計画経済から市場経済への移行という壮大な実験に惹かれ、理論と実証の両面からその経験を総括し、今後採るべき方策についても大胆に提案している。これに当たって、マルクス経済学が退潮し、制度とその変化を正面から取り上げる「新制度派経済学」が脚光を浴びている。日本においても青木昌彦氏(経済産業研究所所長/スタンフォード大学教授)の一連の研究を始め、この新制度学派の手法に基づく日本的システム...

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    • 関 志雄(上席研究員)
  • "the Skeptical environmentalist"

    地球温暖化に関する「京都議定書」が、国会で満場一致で批准された後、霞ヶ関の某所で関係各省庁の環境問題専門家による会議が開かれた。"OFF THE RECORD"という表示の掲げられた会場で行われた議論の結論は、驚いたことに「京都議定書の目標を達成することは不可能だ」というものだった。なぜ達成不可能な条約を批准したのかという質問に、ある課長は「京都で決めたというのが決定的だった。議長国の日本が抜けるわけにはいかなかった」という。

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    • 池田 信夫(上席研究員)
  • 『未完の経済外交』

    グローバリゼーションの進展とそれに対する反動は最近の事象でないとの論調を時折見かける。19世紀半ばの大西洋海底電信ケーブルの敷設やパナマ運河・スエズ運河の開通が情報、人、物品、サービスの国際移動速度の向上とコストの低下にもたらした革新的変化は、現代におけるインターネットの発明やジェット旅客機の普及に匹敵するほどのものであったといわれる。実際問題として、20世紀初頭まで、当時の「文明国」の人々はパスポートもビザもなしに自由に...

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    • 荒木 一郎(上席研究員)
  • 『ダーウィン以来』

    この本は1977年にアメリカで出版されており、日本語訳もハヤカワ文庫で1995年に出ているから結構古い本であるが、その内容は時代と関係ない新鮮さがある。
    残念なことに、著者は最近60歳で亡くなったが、天才的古生物学者で進化学者であった。内容は彼のエッセイのアンソロジーである。前書きによると1970年代にアメリカの自然史博物館の出している「ナチュラル・ヒストリーマガジン」のコラムとして毎月連載されていたものである。

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    • 横山 禎徳(上席研究員)
  • 『慮る力』

    夏休みだから、気楽に楽しんで読める本がいい。「慮る力」はそんな本だ。読んで楽しいのは、実際に職業のプロとして活躍する人々が実名で取材されているからだ。500ページもある厚い本だが、いろんな人が登場するので斜め読みも飛ばし読みも自由自在。どう読んでもビジネスと人間の「EQ」(こころの知能指数)の使い方が出てくる。私は自動車販売業の例とジャーナリストの例が興味深いと感じた。人によっては医師や百貨店、葬儀社、管理職などが面白いかも知れない。

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    • 中林 美恵子(研究員)
  • 『経営学』『経営に終わりはない』『新約聖書入門ー心の糧を求める人へ』

    私は本来、本を読むスピードが速くないうえ、ひとつひとつじっくり考えながら読む方なので、読む本をかなり選ぶほうだと思います。したがって、ベストセラーを追いかけて読んでいく感じではないので、最新刊というわけではありませんが、これならまだ読んでいない人は、絶対に夏休みに読んで後悔しないと保証できる本を、最近の自分の関心領域に近いところから3冊挙げたいと思います。

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    • 新原 浩朗(上席研究員)
  • 『リピーターを呼ぶ感動サービス』『すべては一杯のコーヒーから』

    「一物一価」を多くの経済学が前提とするが、現実世界では自明ではない。それは、5W1Hのコンテクストによって変わってくる。話をはっきりさせるため、対象となる商品・サービスそれ自体(What)は全く同一であるとしよう。それでも、誰(Who)が誰に売るかで、値段が変わるのはアラブ商人の鉄則である。親族、親友、知人、常客、一見客、外国人というように売り手から同心円状に広がる距離感によって価格差別をするのが彼らのマナーであり、社会通念に合致しているという。

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    • 安藤 晴彦(客員研究員)
  • "Legalization and World Politics"

    我が国の通商政策は、かつてはWTO体制を中心とした多数国間体制だけに依拠する立場をとっていたが、最近では、WTO体制に基軸を置きながらも、FTA等の地域的な枠組みを積極的に推進するという重層的な通商政策に移行してきている。このような通商政策の変化も、「法的制度化(legalization)」を進めることでは共通している。我が国をめぐる国際通商関係が国際条約の締結によって安定化するという基本思想は、変化の前後を通じて確固とし...。

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    • 小寺 彰(ファカルティフェロー)

番外編 スタッフが薦めるこの一冊

  • 『アメリカの民主政治』

    本書はフランス人貴族、トクヴィルによって約170年前に書かれたものである。王制から共和制へ向かう時代の流れの中、1831年、弱冠26歳のトクヴィルはアメリカの刑務所制度の研究をするという使命を受けて渡米、全国を精力的に旅行し、多くの著名人や一般の民衆からさまざまな話を聞いて回った。

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    • 熊谷 晶子(広報担当)
  • 『サッカーの敵』

    この本はフットボールを求めて世界を旅した著者が、その経験を基に若干25歳にして上梓したもので、世界のフットボールジャーナリズム界に衝撃を与えた(原題:"Fooball Against the Enemy"[Orion,1994])。この本の特徴は、従来あまり取り上げられることの少なかった、フットボールの社会的・歴史的・文化的側面にスポット...

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    『バルサとレアル』

    『ディナモ・フットボール』

    • 澁川 修一(情報システム/研究スタッフ担当)
  • 「中国底層訪談録」

    さまざまなサイトで転載されている「中国底層訪談録」を検索して読みました(編集部注:「中国底層訪談録」は現在中国で発禁書となっています)。それは私の知っている中国であり、知らない中国でもあります。著者との対談の形で目の前に迫ってくる中国の下層社会にある人々の運命は、なかなか頭から離れることができず、ここ数年来、一番衝撃を受けた書籍かもしれない。本書は主人公が60人登場する、老威が10年もかけて書き上げた力作です。
    出稼ぎ者、趙二。国営の鉱山から石炭を盗むことにより食べている村民ですが、命をかけて長時間働いても、一日数元(数十円)しか稼ぎがない。

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    • 李 琳(広報担当)