中学の強制的な部活動がスキルとアウトカムに与える影響

執筆者 安井 健悟 (青山学院大学)/佐野 晋平 (神戸大学)/久米 功一 (東洋大学)/鶴 光太郎 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2021年9月  21-J-046
研究プロジェクト AI時代の雇用・教育改革
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概要

本論文は中学の部活動が認知・非認知スキルや教育・労働市場・健康のアウトカムに与える短期・長期の因果的な影響を実証的に分析するものである。部活動への参加の内生性の問題に対処するために、在学した公立中学において部活動への所属や活動そのものが生徒に強制されたかという学校ごとの方針を操作変数として用いて因果的な影響を推定した。まず、OLSにより部活動と様々なスキルおよびアウトカムとの偏相関を確認したところ、部活動への参加と17個の変数に相関があることが確認された。しかしながら、操作変数を用いて部活動の因果的な影響を推定すると、それらの関係はほとんど確認されなかった。確認された影響は、短期的には中3の学力を高くし、高校での遅刻・欠席を少なくし、長期的には協調性を高くするものの、外向性と賃金を低くするということである。この結果は、部活動に参加しないという生徒の合理的な意思決定に学校が介入して参加させると、生徒個人にとっての資源配分が非効率になり、獲得されるスキルや長期的なアウトカムが低下しているとも解釈できる。また、生徒にとってだけではなく、部活動の費用を負担する教員、学校や政府にとっても望ましくない影響だと考えられる。