日本語タイトル:高収益にもかかわらず設備投資はなぜ伸びないのか? 日本の製造企業のパネルデータに基づく実証分析

Why Is Investment So Weak Despite High Profitability? A panel study of Japanese manufacturing firms

執筆者 小川 一夫 (関西外国語大学)/Elmer STERKEN (University of Groningen)/得津 一郎 (神戸大学)
発行日/NO. 2019年2月  19-E-009
研究プロジェクト 企業金融・企業行動ダイナミクス研究会
ダウンロード/関連リンク

概要

わが国の製造企業の設備投資は、投資が生み出す収益性が高いにもかかわらず、伸びてこなかった。この傾向は高度成長が終焉した1970年代中頃以降、持続している。この研究の目的は、1970年から2014年までの半世紀近くに及ぶ製造企業のパネルデータを用いて、その原因を計量的に明らかにすることである。投資が生み出す収益性を期待を明示的に考慮した限界qによって計測し、投資率を被説明変数とする投資関数を推定することによって、設備投資の限界qに対する反応が年々低下していることが明らかとなった。その結果は説明変数の選択に依存しない頑健なものである。さらに、低下の原因を探るために、企業を売上高成長率と生産コスト変化率の正負によって4つの企業群に分類した。高度成長の終焉とともに、売上高成長率と生産コスト変化率がともにプラスの「成長企業群」が相対的に減少し、売上高成長率と生産コスト変化率がともにマイナスの「リストラ企業群」が相対的に増加していることがわかった。また、それぞれの企業群について設備投資関数の推定を行ったところ、成長企業群では限界qに対する投資の反応が最も高く、リストラ企業群では最も低いという計測結果が得られた。従って、高収益にもかかわらず設備投資が低迷している原因は、限界qに対する投資の反応が最も低いリストラ企業群の相対的な増加に起因していることがわかった。

概要(英語)

We examine the investment behavior of Japanese manufacturing firms, using firm-level panel data for the period of 1970 to 2014. We find that the profitability of investment, measured by marginal q, has increased over time, while the investment rate has declined. We shed light on the perceived gap between investment and marginal q by estimating a marginal q-type investment function. We find that the investment sensitivity to profitability has declined steadily, which is partly explained by a decrease in the proportion of growth firms that have strong investment sensitivity to marginal q, and an increase in the proportion of restructuring firms that have weak investment sensitivity to marginal q.