残業の実態とその決定要因―4つのパネルデータを用いた比較分析―

執筆者 佐藤 一磨 (拓殖大学)
発行日/NO. 2019年2月  19-J-006
研究プロジェクト 働き方改革と健康経営に関する研究
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概要

本稿では4つのパネルデータ(『人的資本形成とワークライフバランスに関する企業・従業員調査(SCE)』、『消費生活に関するパネル調査(JPSC)』、『慶應義塾家計パネル調査(KHPS)』、『日本家計パネル調査(JHPS)』)を用い、残業の実態とそれに影響を及ぼす要因を検証した。本稿の特徴は、残業を賃金が支払われる残業と賃金が未払いの残業(サービス残業)に分け、後者に注目している点にある。分析の結果、次の3点が明らかになった。1点目は、景気変動と賃金支払い残業時間、サービス残業時間の関係を分析した結果、景気後退期にサービス残業時間が増加し、賃金支払い残業時間が減少していることがわかった。2点目は、職場環境や上司の状況とサービス残業の関係について分析した結果、突発的な業務、高いノルマや目標、重い責任や権限、そして、周りの人が残っていると退社しにくい環境がサービス残業を増加させることがわかった。3点目は、サービス残業による逸失賃金の算出の結果、男性では1か月間で2万8千円~6万7千円程度の逸失であり、女性では1万5千円~4万2千円程度の逸失であることがわかった。