定年後の雇用パターンとその評価-継続雇用者に注目して

執筆者 久米 功一 (東洋大学)/鶴 光太郎 (ファカルティフェロー)/佐野 晋平 (千葉大学)/安井 健悟 (青山学院大学)
発行日/NO. 2019年1月  19-J-002
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

本稿では、経済産業研究所(RIETI)が実施した定年退職や継続雇用に関するウェブアンケートの個票データを分析して、高齢雇用者の立場から、継続雇用制度や高齢者雇用制度に対する評価を行った。分析結果によると、継続雇用者の定年後の仕事満足度は低く、賃金低下の幅が大きく、雇用の安定と引き換えに、処遇の悪化を受け入れていた。継続雇用者の65歳以降の就業意欲は、他の就業者よりも有意に低かった。ただし、継続雇用者でも、専門職の場合には、時間当たり賃金や仕事満足度が高く、60歳時(定年時)の業務に関する後進の教育係の仕事満足度は高かった。一方、継続雇用者は、雇用継続を希望し、職務内容の変化を受け入れるが、転職、賃金プロファイルの変更、定年制の廃止に対しては消極的であった。今後の高齢者雇用の課題としては、継続雇用を選択する場合でも、専門職や若手・後進の指導に当たるなど定年までに専門的なスキルや能力を蓄積し、活かすことが必要だ。また、継続雇用者の仕事満足度や65歳以降の就業意欲が低いことを考慮すると、高齢者の就業率向上に対しては、65歳以上の継続雇用年齢引上げの効果は不透明であり、高齢者の希望・特性に応じて多様な働き方が選択されていくことが重要といえる。