日本企業の為替リスク管理とインボイス通貨選択:「2017年度日本企業の貿易建値通貨の選択に関するアンケート調査」結果

執筆者 伊藤 隆敏 (コロンビア大学 / 政策研究大学院大学)/鯉渕 賢 (中央大学)/佐藤 清隆 (横浜国立大学)/清水 順子 (学習院大学)
発行日/NO. 2018年9月  18-J-025
研究プロジェクト 為替レートと国際通貨
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概要

本論文は、海外活動を行っている製造業の全上場企業1,006社を対象として2017年11月に調査票を送付して実施した「日本の貿易建値通貨の選択に関するアンケート調査」の回答結果をまとめ、2009年と2013年に行ってきた同様の調査の回答結果と比較し、日本企業のインボイス通貨選択と為替リスク管理の現状と経年変化について論じる。

今回の調査結果の特徴として、以下二点が挙げられる。第一に、総輸出に占める円建て比率は、2013年以降ドル建て比率を下回り、低下傾向が続く一方、ドル建ては総輸出の約半分を占め、安定している。円建て比率の長期継続的な低下を踏まえると、こうした貿易建値通貨選択を基本とする為替戦略は、為替相場の変動に対する日本企業の業績の影響を増大させている可能性がある。第二に、アジア通貨建て利用の拡大である。回答企業平均では44%の企業が人民元建てを利用しており、企業規模が大きくなるほど、人民元を取り扱っている割合が高くなる傾向が顕著である。こうした近年の特徴は、日本企業にとってアジアの主要な取引相手国の通貨の国際化がより重要となっていることを示唆するものである。