人工知能AI等が雇用に与える影響;日本の実態

執筆者 岩本 晃一 (上席研究員 / 日本生産性本部)/田上 悠太 (統計数理研究所)
発行日/NO. 2018年5月  18-P-009
研究プロジェクト IoTによる生産性革命
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概要

2013年9月、オックスフォード大学のフレイ&オズボーンは、米国において10〜20年内に労働人口の47%が機械に代替されるリスクが70%以上という推計結果を発表し、それを契機に世界中で「雇用の未来」に関する研究ブームが発生した。日本はそうした研究ブームとはほとんど無縁で、メディアが47%という数字を取り上げ、人々の不安を煽ってきた。47%という数字は本当か? という疑問が本課題に取り組み始めた動機である。事実に基づいた科学的で冷静な議論が必要である。

第2章は、フレイ&オズボーンの推計について、詳しく分析している。我々同様、フレイ&オズボーンの推計に疑問を持つ人々は多くいた。そうした人々の推計結果を載せている。第3章は、これまで世界中から数多くの論文等が発表され、いくつかの点が解明され、またコンセンサスが得られた内容である。現在、研究ブームはピークを越え、世界はそこから得られた対策に乗り出しつつある。2017年以降、顕著な研究成果はほとんど発表されていない。第4章は、「雇用の未来」の課題を、国として最も深刻に捉え、政府主導で取り組んできたドイツの動向を紹介する。ドイツ人も私と同じ疑問を持ったようだが、調査研究の規模において日本の比ではない。ドイツ政府は、「労働4.0(独Arbeiten4.0,英Work4.0)プロジェクト」を実施してきた。そのドイツも、2016年11月、「白書:労働4.0」White Paper Work 4.0 [2016]を発表し、調査分析は一段落ついた。いまは具体的な対策に乗り出している段階である。第5章は、本稿のメインテーマである「人工知能AI等が雇用に与える影響について日本の実態を調査」したものである。まず筆者は、日本企業の現場を訪ね歩き、日本型雇用の下で新技術がどのような形で導入されつつあるか、現地調査した。次に、日本企業全体の実態を把握するため、2017年8月、約1万社を対象にアンケート調査を実施した。そのアンケート調査から導出される日本企業の動向・実態を詳しく述べる。第6章は、以上の調査研究の結果、導出される政策である。

※本稿の英語版ポリシー・ディスカッション・ペーパー:18-P-013