中国の改革開放と留学政策

執筆者 孟 健軍 (客員研究員)
発行日/NO. 2018年4月  18-J-016
ダウンロード/関連リンク

概要

中国は1977年からの大学入試の再開およびその後の公費派遣留学の決定を契機に改革開放の時代に入ったと言っても過言ではない。本稿は、留学政策の制度設計プロセスおよびその影響について総合的に考察するものである。
一国の経済発展やイノベーションを支えるための留学政策は人材確保戦略とも言われ、重要な役割を果たしている。しかし、過去40年間の中国における留学政策は制度的ジレンマの中、絶えず試行錯誤を繰り返し、留学人材もブレイン・ドレインの状況に長らく陥っていた。その後、国内経済市場化の進展に伴って帰国促進政策の強化によって留学人材は、ブレイン・サーキュレーションに変容し、近年の国内における科学技術の発展およびイノベーションなどに大きく貢献している。
本稿の目的は留学政策の変遷を振り返ることを通じて、人材確保戦略を再構築するための中国政府の政策意図を探ることである。より具体的には、改革開放後の留学政策の背景と要因を検討し、留学政策の試行錯誤および帰国促進政策によって、イノベーションとの相乗効果を狙った中国政府の人材確保の制度構築について考察したい。