団体の設立からみるサードセクターの構成とその変容

執筆者 山本 英弘 (山形大学)
発行日/NO. 2017年10月  17-J-065
研究プロジェクト 官民関係の自由主義的改革とサードセクターの再構築に関する調査研究
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概要

本稿では、サードセクターに対する全国調査データを用いて、団体の設立された時期とリソースの分布という観点から、現代日本のサードセクターの構成とその変容過程を検討した。サードセクター団体は、その時々の社会・政治変動の影響を受けて形成されている。そのため、どの時期にどのような団体が設立されたのかをたどることで、サードセクター全体が形成されていく過程を捉えることができる。

分析の結果、以下の諸点が明らかとなった。第1に、日本のサードセクターは設立時期によって3つに大別できる。終戦直後から高度成長期までに生産セクター関連の団体が誕生し、高度成長期から低成長期にかけては行政の支援を受けた団体が多く設立された。そして、1990年代後半以降は、市民の自発的な結社からなるNPO法人や社団法人が、制度変革の影響も受けながら増加している。

第2に、リソースの分布の布置状況をみても、先にみた設立時期の3つのグループによる相違がみられる。すなわち、設立時期は古いもののリソースは乏しい農林水産業団体や協同組合、行政との密接な関係の下で資源を蓄積させてきた諸団体、そして、1990年代以降に設立された新しい自発的な団体である。

以上のように、現状のサードセクターは三重構造を成している。今後、公益法人制度変革を経て新たに誕生した団体が成長していく過程で、行政との密接な関係の下でリソースを蓄積させてきた日本のサードセクターがどのように変化するのかは注目に値する。