日本におけるサードセクター組織の現状と課題―平成29年度第4回サードセクター調査による検討―

執筆者 後 房雄 (ファカルティフェロー)/坂本 治也 (関西大学)
発行日/NO. 2017年10月  17-J-063
研究プロジェクト 官民関係の自由主義的改革とサードセクターの再構築に関する調査研究
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概要

本稿は、平成29年度第4回サードセクター調査の全体像と調査結果を概観しつつ、日本におけるサードセクター組織の現状と課題について多角的に検討を加える。そもそも「サードセクター」という概念自体が、現時点では十分広く理解されていない現状にある。サードセクターとは何か、サードセクター組織に着目し、その実態を分析していくことにどのような意義があるのか、またどのような分析課題が残されているのかについて、論じていく。

第4回サードセクター調査では、「国税庁法人番号公表サイト」に掲載されている情報を母集団情報として用い、そこから法人格ごとに無作為抽出して得られたサンプルに調査票を発送する郵送方式で行われた。

本稿では第4回サードセクター調査の調査結果について、組織が保有する人的資源、組織ガバナンス、活動の経緯と現況、組織の財務状況、政治・行政との関係性などの観点から分析を加え、サードセクター組織を取り巻く現状と課題について明らかにした。本稿で概観する調査から判明した基礎的事実は多岐にわたるが、(1)「脱主務官庁制の非営利法人」「主務官庁制下の非営利法人」「各種協同組合」の間で、組織力や活動実態などさまざまな面で大きな差異があり、日本のサードセクター組織は「三重構造」化していること、(2)サードセクター組織の役員に占める女性比率の平均値は19.5%であり、サードセクターの指導層においても強いジェンダー・バイアスが見られること、(3)営利企業の経営手法の導入などの「非営利組織のビジネスライク化」が一部の組織で見られること、(4)労働組合や「NPO」に対する「不信」がサードセクター内部でも見られること、などの新たな重要事実が浮かび上がった。