所得消費の帰着構造を考慮した地域間産業連関モデルによる地方創生政策の経済効果分析

執筆者 石川 良文 (南山大学)/中村 良平 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2017年10月  17-J-061
研究プロジェクト 地域経済構造分析の進化と地方創生への適用
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概要

地方創生にあたっては、さまざまな経済振興策や人口増加策が地方自治体で検討・実施されているが、それらの政策の経済効果は地域産業連関分析によって行われていることが多い。そこでは、施策の効果を生産額、付加価値額、雇用者所得などの指標で評価されることが多いが、示される経済効果はあくまで発生ベースの効果である。つまり、実際には、発生した所得は労働者の通勤により地域外に漏出し、また地域内で居住する労働者も一部の消費活動は地域外で行う。従って、発生ベースの経済効果と実際に地域に帰着する経済効果は異なり、通常のモデルで推計された経済効果は過大評価になっている可能性がある。

そこで本研究では、労働者の通勤地、家計の購買地を考慮した所得・消費の内生化産業連関モデルを新たに構築し、実際に地域に帰着する経済効果を分析する手法を検討した。そのモデルの実際の適用事例として静岡県富士市を取り上げ、地方創生政策による経済効果の地域帰着分析を行った。その結果、これまで用いられてきた産業連関モデルによる分析は、その地域の経済効果を過大評価することが示された。