国有企業を通じた輸出促進と相殺関税

執筆者 蓬田 守弘 (上智大学)
発行日/NO. 2017年10月  17-J-059
研究プロジェクト 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第III期)
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概要

本稿では、国有企業を通じた輸出促進に対する相殺関税の効果を国際寡占モデルにより検討する。最終財を生産する民間企業に国有企業が中間財を供給する場合、政府は最終財輸出を促進するため、国有企業に低価格での中間財提供を促す可能性がある。最終財の自由貿易のもとでは、政府が国有企業の経営目標を支配することを通じて、国有企業に限界費用割れで中間財を提供させ最終財の輸出を促進することが示される。国有企業による低価格での中間財提供が最終財生産への補助金と見なされる場合、最終財輸入国は対抗措置として相殺関税を発動することができる。最終財輸出国の国有企業が適正価格を下回る値段で中間財を国内販売した場合に、最終財輸入国が最適関税を発動するという想定のもとで、最適な相殺関税措置が国有企業を通じた最終財の輸出促進を防止するか否かを検討する。また本稿の分析結果をもとに、相殺関税措置と国有企業をめぐる米中間紛争への政策含意を導く。