地域金融機関による経営者教育の効果の検証―金沢信用金庫による取り組み事例―

執筆者 北野 友士 (桃山学院大学)
発行日/NO. 2017年8月  17-J-056
研究プロジェクト 地方創生に向けて地域金融に期待される役割-地域経済での雇用の質向上に貢献するための金融を目指して-
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概要

近年、わが国における中小企業支援策は非常に充実している。しかしながら、施策情報の受け手側である中小企業の経営者側に、有益な情報を収集して活用する能力などが不足しているおそれがある。そのため創業(希望)者などの経営者や、その予備軍に対して、経営者としての教育を受ける機会を提供することは、長期的には開業率の向上や、中小企業における業績の改善、あるいは経営革新の促進などの効果をもたらしうる。そこで本稿では、金沢信用金庫が行っている「きんしん経営塾」を取り上げ、地域金融機関による経営者教育の効果を検証した。分析の結果、「きんしん経営塾」の受講は、「販路の開拓」という業務プロセス、「多様な人材の確保」や「人事評価制度の見直し」「人材育成の強化」「従業員の賃金等の増加」「組織風土の改善」などの人事面、「中期経営計画の策定」や「新規事業の立ち上げ」などの中長期的な取り組み、において有意にプラスの影響を与えていることがわかった。こうした結果から、地域金融機関が経営者教育プログラムに取り組むことは、地域経済における中小企業の経営改善や成長促進、雇用の質の向上に貢献しうる可能性が示唆される。