自然科学を専攻した教員が中学生の理科の学力に与える影響について-日本の国際学力調査データを用いた分析-

執筆者 井上 敦 (政策研究大学院大学)/田中 隆一 (東京大学)
発行日/NO. 2017年8月  17-J-052
研究プロジェクト 日本の労働市場の転換―全員参加型の労働市場を目指して―
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概要

本研究の目的は教員属性のうち自然科学専攻に着目し、生徒の理科の学力との間の統計的関係を明らかにすることである。教員属性が生徒の学力に与える効果を推定する上では、教員と生徒のマッチングがランダムに行われていることが理想的である。本研究では、教員の学校配置転換が定期的に行われるため、生徒と教員のマッチングの内生性の影響が比較的弱いと考えられる日本の公立学校のデータを用いて回帰分析を行う。国際数学・理科教育調査(TIMSS)を用いて推定した結果、理科教員が自然科学を専攻していた場合はそうでない場合に比べて中学2年生の理科のテストスコアが統計的に有意に高いことが確認された。また、分位点回帰の結果、これらの関係は相対的に学力の低い生徒において強く見られることが確認された。さらに、その他の教員属性のうち、教歴は理科のテストスコアと統計的に有意な関係があることも確認された。