日本の法人税改革と法人課税の帰着に関する動学的分析―外形標準課税拡大の効果―

執筆者 土居 丈朗 (慶應義塾大学)
発行日/NO. 2017年8月  17-J-051
研究プロジェクト 法人税の帰着に関する理論的・実証的分析
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概要

本稿では、わが国の法人税改革をめぐり、法人課税の転嫁と帰着について、動学的一般均衡モデルに基づきシミュレーション分析を試みた。本稿では、法人所得課税だけでなく、わが国の税制に即して事業税の付加価値割と資本割も加味した。近年におけるわが国の企業の状況をよりよく描写できるパラメータの下では、わが国の法人税改革によって生じる租税負担の変化分は、短期(1四半期目)では約8%が労働所得に、約92%が資本所得に帰着し、1年程度のうちに約27%が労働所得に約73%が資本所得に帰着するが、時間が経つにつれて労働所得に帰着する割合が高まり、長期(定常状態)では約78%が労働所得に約22%が資本所得に帰着することが示された。本分析で描写した法人税改革は、全体では減税となるから、ここでの帰着とは改革に伴う税負担軽減(課税後所得の増加)を意味する。

さらに、法人税改革において、法人実効税率の引き下げと事業税付加価値割税率の引き上げと事業税資本割税率の引き上げによる影響に分けて、法人課税の帰着を分析した。労働所得への帰着は、短期では、法人実効税率引き下げ分が約14%、事業税付加価値割税率の引き上げ分が約-4%、事業税資本割税率の引き上げ分が約-2%(合計で前掲の約8%)となった。長期では、法人実効税率引き下げ分が約138%、事業税付加価値割税率の引き上げ分が約-44%、事業税資本割税率の引き上げ分が約-15%(合計で約78%)となった。これは、法人実効税率の引き下げにより(限界的に)増える労働所得が、同時に事業税付加価値割税率の引き上げに伴い30%強も減らされることを意味する。また、事業税資本割は広義の資本課税でありながら労働所得の恩恵を減殺していることが明らかとなった。その意味で、外形標準課税の拡大は、資本所得よりもむしろ労働所得に不利であることが明らかとなった。