減損会計は企業投資行動に影響を及ぼすか

執筆者 植杉 威一郎 (ファカルティフェロー)/中島 賢太郎 (一橋大学)/細野 薫 (学習院大学)
発行日/NO. 2017年4月  17-J-033
研究プロジェクト 企業金融・企業行動ダイナミクス研究会
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概要

減損会計とは、企業が保有する資産価値が減少した場合に、当該資産の貸借対照表上の価額を減らすとともに、減損分を利益額から差し引く会計上の取扱いである。日本では、固定資産の減損会計基準が2005年度から強制適用されたが、景気低迷期にその導入が議論されたこともあり、負の影響を懸念する見方も多かった。一方、先行研究の多くは、減損会計を含む保守的な会計基準には効率的な投資を促す効果があるとしている。本稿では、2000年度から2014年度における上場企業のパネルデータを用い、減損会計が企業の設備投資や土地購入・売却行動に及ぼす影響を調べた結果、以下の点を見出した。第1に、減損計上企業と非計上企業とを比較すると、設備投資率や土地購入率に有意な違いがない場合が多い。第2に、保有土地の時価簿価比率で表される含み益は設備投資率を高める効果を持つが、減損計上の有無は、含み益と設備投資率との関係には影響しない。第3に、減損計上企業における土地売却率は減損計上しない企業における土地売却率を上回る。この傾向は、利益率が上昇傾向にある企業においてより強く観察されており、財務に比較的余裕のある企業が減損の生じている土地を売却して損金を計上するという税務上の動機に基づいた行動の結果である可能性がある。