プラットフォーム産業における市場画定

執筆者 川濵 昇 (ファカルティフェロー)/武田 邦宣 (大阪大学)
発行日/NO. 2017年4月  17-J-032
研究プロジェクト グローバル化・イノベーションと競争政策
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概要

現在、プラットフォームとりわけデジタルプラットフォームがその多面市場の特性およびデータ蓄積の規模の経済性などから大きく持続的な市場支配力をもつことがあるのではないか、また、それらの市場支配力が他の市場での競争の梃子となり、あるいはその他の市場での競争を制限する慣行の温床となるのではないかと懸念されている。さらには、企業結合規制において従来の規制手法では対応しにくいケースが存在する可能性なども指摘されている。これらの課題は現在、国際的に議論され、検討されている。

こうした問題を考察するには、まず多面市場特性を有するプラットフォーム産業での市場画定をいかに行うかという問題の検討が必要である。多面市場に含まれる個々の取引市場間の相互依存関係を市場画定でどのように勘案するのか。しばしば見られる無料市場を市場と見ることが適切か否か。適切であるにしても競争的抑制を加えるプレイヤーをどのように識別するのか。その際、価格面から見た需要の代替性に注目した従来の手法がどのような難点をもつのか。さらにデジタルプラットフォームで重要な役割を果たすデータ蓄積の問題が市場画定や市場支配力分析でどのような役割を果たすのか。

本稿では、プラットフォーム産業を検討する際、基本的でありながら、わが国ではほとんど検討されることがなかったこれらの問題を、「無料市場」「イノベーション市場」「データ市場」の観点から検討することで、プラットフォーム産業における競争政策の基礎作業を行った。