災害復興の空間経済分析

執筆者 藤田 昌久 (甲南大学)/浜口 伸明 (ファカルティフェロー)/亀山 嘉大 (佐賀大学)
発行日/NO. 2017年4月  17-P-014
研究プロジェクト 国際化・情報化新時代と地域経済
ダウンロード/関連リンク

概要

本論文は、国土全体を粘着性ないし経路依存性を持った1つの都市・地域経済システムとして捉える空間経済学が、災害復興のための適切な分析の枠組みを提供してくれることを説明する。少子高齢化の進む中で個々の被災地が創造的に復興し、国全体が均衡的にさらに発展していく上において、日本のすべての地域におけるイノベーションの活性化が鍵となる。この観点からも、商品の差別化ないし多様性に基づく独占的競争モデルと人間の多様性に基づくイノベーション・モデルを中心とする空間経済学は、適切な分析の枠組みとともに、有効な政策提言を提示し得るであろう。

東日本大震災で甚大な津波の被害を受けた三陸沿海地域は、過去に幾度も同様の被災経験を持つが、これまでは自然的集積力に支えられた復興を遂げてきた。しかしすでに衰退のトレンドにあった地域経済が復興するためには、元の形に戻すのではなく、自然的集積力を生かしつつ、規模の経済と多様性に基づく内生的集積力を働かせるような転換が必要である。本論文では、そのような従来と異なる創造的復興に資する政策として、都市計画、交通政策、地場産業クラスター、自治体の広域連携、大学などの公共基盤の役割について論じる。