環境分野における経営資源の蓄積と企業価値:環境投資活動から見た実証分析

執筆者 枝村 一磨 (科学技術・学術政策研究所)/宮川 努 (ファカルティフェロー)/内山 勝久 (日本政策投資銀行設備投資研究所 / 学習院大学)
発行日/NO. 2017年3月  17-J-027
研究プロジェクト 無形資産投資と生産性 -公的部門を含む各種投資との連関性及び投資配分の検討-
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概要

本研究は環境関連投資が企業価値の向上に寄与するかどうかを、「科学技術研究調査」や「日本政策投資銀行企業財務データバンク」「CSR企業総覧」の企業レベルのデータを利用して検証した。標準的な企業理論では、環境関連投資は企業利潤を増加させるとは考えられないが、近年の研究では、さまざまな価値観を持つステークホルダーの利得を考慮すると、環境関連投資が企業の評価を高めうるとされている。本研究は、環境関連投資の蓄積を、投資家が評価する企業の貴重な経営資源の1つとみなし、この支出が企業価値に与える影響を考察した。具体的には、環境関連投資として環境分野への研究開発投資や環境保全投資を取り上げ、トービンのqやROA、ROEに与える影響を検証した。実証結果から、環境関連投資が企業価値を高めており、有意義な経営資源の蓄積になっていることが確認された。また、環境関連投資に関して、積極的な広報活動を伴うことにより、より企業価値を高めることも確認できた。