債務問題と長期経済停滞

執筆者 小林 慶一郎 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2017年3月  17-P-013
研究プロジェクト 経済成長に向けた総合的分析:ミクロ、マクロ、政治思想的アプローチ
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概要

先進国経済で懸念される長期経済停滞について、日本のバブル崩壊後の状況を振り返り、民間部門における過剰債務がその原因となる可能性を探る。簡単な理論モデルによると、過剰債務が蓄積すると、借り手の経済活動は非効率になることが示される。さらに、過剰債務があるレベルに達すると、借り手の非効率は永続することになり、これが長期経済停滞をもたらす可能性がある。さらに、その場合、貸し手は、借り手の過剰債務を削減するインセンティブは持てず、したがって、政府による政策介入がなければ、経済停滞はきわめて長く継続する。対症療法的な財政金融政策ではなく、過剰債務の軽減を促進する政策介入(債務の株式化などによる不良債権処理の促進、再建型倒産法制の整備など)によって、長期停滞の原因を直接的に取り除ける可能性が示唆される。