地域経済における間接貿易の役割

執筆者 石川 靖 (経済産業省)/齊藤 有希子 (上席研究員)/田岡 卓晃 (経済産業省)
発行日/NO. 2017年3月  17-P-009
研究プロジェクト 組織間ネットワークのダイナミクスと地理空間
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概要

本稿では、地方において、都市部に比べて直接貿易する企業の割合が少ないという問題に鑑み、間接的に貿易に関わる間接貿易企業がどのような役割を果たし得るのか、また、間接貿易企業を支える企業がどのような機能を持ちうるのかを明らかにすることを目的とし、実証分析を行った。主要な分析結果は以下の通りである。(1)製造業企業の特性を比較すると、都市部に比べて地方の企業規模が小さい傾向があるが、規模をコントロールした上でも地方の企業の方が直接輸出する確率が低く、貿易コストが高いことが推測される。(2)間接貿易も含めると、地方においても4割弱の企業が輸出に関わっており、それら企業の雇用者数、売上高、付加価値の総計は地域全体の7~8割の寄与を持つ。(3)卸売経由の間接輸出企業は直接輸出を開始する傾向が強く、地方ほどその傾向が顕著であるが、地方の卸売企業の仲介機能は低く、多くの企業が都市部の卸売経由で輸出に関わっている。(4)直接輸出する企業ほど成長率が高く、地方ほどその傾向が顕著であり、地方の製造業経由の間接輸出企業の成長率も高い。以上の結果から、直接輸出が困難な地方の製造業企業の間接輸出を促進させることが重要であり、都市部の直接輸出する卸売企業とのマッチングや地方の卸売企業の輸出能力の強化を行うことにより、直接輸出企業の比率を高める可能性があることが示唆される。また、地方の直接輸出企業が増えると、成長性の高い製造業経由の間接輸出企業が付随して増え、地域経済の成長に大きく寄与しうると考えられる。