執筆者 | 森川 正之 (理事・副所長) |
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発行日/NO. | 2017年2月 17-J-010 |
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概要
本稿は、狭く定義されたサービス業種を対象に、生産性のクロスセクションでの分散と時系列での動態に関する実証的事実を提示する。高頻度のミクロ時系列データを使用し、サービス業の生産性を数量ベースの生産性指標(TFPQ)と金銭ベースの指標(TFPR)を比較しつつ分析した研究は、おそらく初めてのものである。分析結果によれば、第1に、TFPQとTFPRの変動は、事業所レベルで高い相関関係がある。第2に、生産性の事業所間格差は、一般にTFPQよりもTFPRの方が大きい。これは製造業を対象とした先行研究とは異なる結果である。第3に、産業平均のTFPが高いときは、一般にTFPの事業所格差が小さく、産業平均のTFPが低いときは格差が大きい傾向がある。第4に、TFPの時系列でのヴォラティリティが高い事業所ほど、平均的な生産性水準が低い。以上の結果は、相対的に生産性の低い事業所において、需要平準化の潜在的利益が大きいことを示唆している。
※本稿の英語版ディスカッション・ペーパー:17-E-088