保育の「質」は子どもの発達に影響するのか―小規模保育園と中規模保育園の比較から―

執筆者 藤澤 啓子 (慶應義塾大学)/中室 牧子 (慶應義塾大学)
発行日/NO. 2017年1月  17-J-001
研究プロジェクト 医療・教育の質の計測とその決定要因に関する分析
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概要

本研究は、2015年度の「子ども・子育て支援新制度」の本格施行に伴い急増する小規模保育事業の効果研究の一環とし、小規模保育および中規模保育園の保育環境を定量的に評価し、保育の質に関わる諸要因(保育環境、担当保育士の保育士資格取得に至る学歴および保育士歴、園規模、子ども対保育士比)と子どもの発育状況との関連を検討した。保育の質研究において国際的に広く利用される保育環境評価スケールを用い、小規模保育園および中規模保育園の1歳児クラスにおける保育環境を評価し比較した。その結果、全般的には小規模保育園の方が中規模保育園よりも保育環境の質が良好であることが示された。また、保育環境の良さと担当保育士の保育士歴の長さは、1歳児学年末における子どもの発育状況に有意な正の関連をすることが示された。保育園の規模や子ども対保育士比、担当保育士の保育士資格取得に至る学歴は、子どもの発育状況と有意な関連は認められなかった。本研究の結果は、「良質な保育が子どもの適応的な発達と関連する」という海外の研究成果と一致するものである。今後は、自治体レベルで長期に縦断的調査研究を行うなど、代表性の高いサンプルで保育の質やその長期的な影響を評価、検証していく必要がある。