少子高齢化が進む日本における地域通貨の有用性

執筆者 藤 和彦 (上席研究員)
発行日/NO. 2017年1月  17-P-001
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概要

少子高齢化による人口減少社会となった日本は「つながり」が作りにくい環境になっており、家族がシェルター機能を喪失する中にあってコミュニティの再生が遅々として進んでいない。このような事態を打開するために地域通貨の発行が有効であると考える。「金銭」を贈与し合うことが日本社会の特徴であり、江戸時代に藩札が大量に発行され地域経済の活性化に寄与していたからである。戦後日本での地域通貨の成功例はほとんどないが、仮想通貨ビットコインの技術を応用することにより、地域通貨の発行コストが低減され、安全性が向上し、法律・税制上の問題点も解消される状況になった。「地域に良いことを行えば支給され、地域のためになることに利用する」地域通貨を地方創生に活用する民間企業も現れてきている。地域全体の厚生を向上させる観点から地方自治体が地域通貨の発行主体になることが望ましく、多層構造のコミュニティ(イエ・ムラ・イチ)を構築するために有効に活用されるべきである。地域通貨の信用を維持・向上させるために、その運用方法について地域住民の意見が十分に反映される仕組みを構築することが肝要であるが、これにより真の地方自治への一歩が踏み出せるのではないだろうか。