正社員と有期雇用労働者の賃金格差

執筆者 安井 健悟 (青山学院大学)/佐野 晋平 (千葉大学)/久米 功一 (リクルートワークス研究所)/鶴 光太郎 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2016年11月  16-J-060
研究プロジェクト 労働市場制度改革
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概要

本論文の目的は契約社員、嘱託社員という有期雇用労働者と正社員の賃金差を明らかにしたうえで、Blinder-Oaxaca分解によりその時間当たり賃金差のどの程度が人的資本や職種の違いにより説明できるのかを明らかにすることである。分析の結果、有期雇用労働者の賃金は正社員よりも平均的に男女計だと36.5%低く、男性のみで32.4%低く、女性のみで16.6%低い。しかしながら、学歴、年齢、勤続年数、職種などの属性を制御すると、男女計、男性のそれぞれで有期雇用労働者の時間当たり賃金は正社員よりも8.8%、8.4%低く、女性の場合、平均的な賃金差がなくなるなど、属性をコントロールしても残る賃金格差の水準は欧州の同様の分析と比較しても決して大きくなく、ほぼ同程度かそれ以下の水準であることが分かった。また、Blinder-Oaxaca分解によると、正社員と有期雇用労働者の賃金差を説明する重要な属性は、男性の場合は勤続年数、職種であり、女性の場合は職種、学歴であることが明らかとなった。