地域雇用産業連関モデルの開発と適用

執筆者 中村 良平 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2016年9月  16-P-011
研究プロジェクト 地域経済構造分析の進化と地方創生への適用
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概要

地域振興を目指す地方自治体にとっての関心事は、生産額や所得以上に雇用であるといえよう。特に、人口減少時代においては、その重要度は高まってきている。

地域産業連関表においては、雇用係数を用いて最終需要の変化に対する雇用誘発効果を産業部門別に求めることができる。しかしながら、どういった経路を経て雇用が変化していくのかを検証することは出来ない。それを見るには雇用係数に基づく逆行列を作成する必要がある。

本研究では、生産者価格表示の競争移入型の地域産業連関表を雇用者数で把えたモデルに置き換え、それによって需要の変化による雇用者への影響について、他産業からの間接効果を見ることができるようにモデルを転換する。また消費内生化モデルとすることで、雇用効果を「レオンチェフ(生産波及)効果」と「ケインズ(所得・支出)効果」に分離することを可能としている。さらに、経済基盤モデルとの対応関係を明確化することで、従来は一次産業や鉱工業などが基盤産業として先験的に扱われた経済基盤乗数であったものが、サービス産業を含む全ての産業部門における基盤産業化が地域経済に与える雇用効果を捉える。これらによって、産業別に雇用波及プロセスの異なりが明らかになり、地方自治体の総合戦略の実践や今後の政策立案にとって大いに寄与するものとなる。