信頼と心理指標(抑うつ度、不安度、ネガティブ感情、ポジティブ感情)の関係の検証:心理介入によって信頼を向上させることができるか?

執筆者 関沢 洋一 (上席研究員)/宗 未来 (慶應義塾大学)/野口 玲美 (千葉大学)/山口 創生 (国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)/清水 栄司 (千葉大学)
発行日/NO. 2016年8月  16-J-050
研究プロジェクト 人的資本という観点から見たメンタルヘルスについての研究 2
ダウンロード/関連リンク

概要

人々の間の信頼の向上は、経済成長にプラスの影響を及ぼしたりマクロ経済の安定にも寄与したりすることが指摘されるなど、経済的に見て重要な課題である。先行研究において、信頼は幸福度やメンタルヘルスと関係していることが示されていることから、本研究では、3つの介入研究を活用して、メンタルヘルスの改善に寄与することが期待される認知行動療法、シンプルなマインドフルネス、ポジティブ心理学のエクササイズを実施した群が統制群と比べて、信頼の程度を計測する指標である一般的信頼尺度(山岸, 1998)を向上させるかを検証した。この結果、ポジティブ心理学の介入では、一般的信頼尺度が統制群よりも有意に向上したが、他の介入群では有意な効果は見られなかった。以上の3つの介入研究のデータに加えて、1つの観察研究の結果を使って、パネルデータを活用した固定効果モデルによって一般的信頼尺度と他の心理指標(抑うつ度、不安度、ネガティブ感情、ポジティブ感情)との関係を検証したところ、一般的信頼尺度が高くなるほど抑うつ度と不安度とネガティブ感情が低下し、ポジティブ感情が高まることが示され、先行研究の結果が確認された。