中国における石炭産業の構造変化と制度設計

執筆者 孟 健軍 (客員研究員)
発行日/NO. 2016年4月  16-J-041
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概要

中国経済の高度成長を支えてきた重要な要素の1つは、大規模なエネルギー供給である。1978年改革開放以来三十数年間に亘って、中国国内におけるエネルギー供給の石炭比率は常に70%以上を占めている。これは中国の天然資源の賦存状況によって石炭依存のエネルギー供給構造に制約されている。それゆえ、中国のエネルギー供給問題は石炭産業の問題そのものと言っても過言ではない。


また、中国では2014年現在6850社の石炭採掘企業が存在している。これは寡占下に置かれている数社の石油企業や電力企業とは対照的である。市場と政府の間に挟まれている中国の石炭産業は、改革開放以降に導入された市場メカニズムに従って競争と寡占の両面性を持っている。そのため、石炭産業構造変化の解明や企業組織再編の行方が中国経済自身の発展および制度変化の理解に重要な役割を果たすと思われる。


本稿の目的は、市場化による石炭産業構造の変化や石炭企業の再編を解明することにある。まず、改革開放以降のエネルギー供給問題から中国経済のなかに置かれている石炭産業の地位を検証する。次に、石炭産業の現状と石炭資源の地域偏在による政府の権力と地方の権利について議論する。さらに石炭産業関連政策や石炭産業集中度の分析を通じて企業組織の国有化と民営化に関する議論を展開する。最後に、市場化への改革深化こそ石炭産業構造変化と石炭企業再編の鍵となる中国の石炭産業発展の政策環境と課題を探る。