日本企業の為替リスク管理とインボイス通貨選択 「平成25年度 日本企業の貿易建値通貨の選択に関するアンケート調査」結果概要

執筆者 伊藤 隆敏 (プログラムディレクター)/鯉渕 賢 (中央大学)/佐藤 清隆 (横浜国立大学)/清水 順子 (学習院大学)
発行日/NO. 2016年3月  16-J-035
研究プロジェクト 為替レートのパススルーに関する研究
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概要

本論文では、海外活動を行っている製造業の全上場企業962社を対象として2013年9月に調査票を送付して実施した「日本企業の貿易建値通貨の選択に関するアンケート調査」の回答結果を報告し、前回2009年9月の同様の調査の回答結果と比較して、日本企業のインボイス通貨選択と為替リスク管理の現状と過去4年間の変化を明らかにした。同アンケート調査は、日本企業の為替リスク管理の実態からインボイス通貨選択まで多岐にわたる調査項目によって構成され、調査票送付企業の5分の1にあたる185社(2009年調査は227社)から回答を得たが、そのうち69社が前回調査と重複する回答企業であった。

今回の調査における主な特徴として、以下3点が挙げられる。第1に、日本から世界への輸出総額に占める円建て取引の比率は48%から42%へと低下し、ユーロ建て取引比率も若干減少する一方で、米ドル建て取引の比率は42%から49%に上昇した。また、アジア通貨建て取引比率が若干上昇傾向にあることが確認された。第2に、仕向地別に見ると、アジア向け輸出において米ドル建てが選択される比率が上昇しており、相手国(アジア)通貨建て取引は若干の上昇傾向にあるものの、依然としてそのシェアは小さい。第3に、日本の本社企業において取り扱われる外国通貨数は平均3.1種類から3.4種類に増加しており、日本企業がより多くの通貨を取り扱うようになっていることが示された。

以上のような変化はあるものの、先進国向け輸出の企業内取引において相手国通貨建て取引を、アジア向け輸出の企業内取引において米ドル建て取引を選択するという日本輸出企業の特徴は、基本的に変わっていない。また、本社企業における為替ヘッジ、およびマリー・ネッティングなどの為替リスク管理手法の利用は、前回と同様に企業規模が大きいほど活発であることが確認された。