日本企業の技術ノウハウの保有状況と流出実態に関する質問票調査

執筆者 渡部 俊也 (ファカルティフェロー)/平井 祐理 (東京大学政策ビジョン研究センター)
発行日/NO. 2016年3月  16-J-014
研究プロジェクト 日本の製造業におけるノウハウ資産の把握と技術流出のインパクトに関する実証分析研究
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概要

企業の競争力の源泉の1つとして営業秘密の重要性が高まっている。このうち製造業において重要となる技術ノウハウの保有状況と流出の実態に関して、平成24年の特許出願件数上位5000社を対象として質問票調査を行った。その結果770社の有効サンプルを得ることができた(有効回収率16.0%)。得られたデータの分析によって、日本の技術ノウハウが、特許よりもやや少ないが同程度の量的保有が確認できたことに加え、近年は形式知化された技術ノウハウは増加傾向にあると推定されること、小規模企業では技術ノウハウの活用頻度が高くまた特許と補完関係のある比率も高いことなどが明らかとなった。技術ノウハウ流出との関係では、営業秘密管理の水準の影響は流出の有無に対して効果が認められたことに加え、技術流出の有無をチェックする活動である検知活動を説明変数とする場合、流出件数との間に上に凸の関係が有意に認められた。この結果から検知活動が行われていない場合、流出が起きていても検知されていない可能性が強く示唆されるとともに、検知活動そのものに流出件数の抑止効果があることも示唆された。