洋上風力産業拠点の形成による地域振興・雇用創出

執筆者 岩本 晃一 (上席研究員)
発行日/NO. 2016年2月  16-P-004
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概要

本稿は、「洋上風力発電」(2012年12月, 日刊工業新聞社, 岩本晃一著)を出版以降、全国各地で講演を行ってきたものの集大成である。地方での主な関心は、電力市場や原子力の動向などよりむしろ「地元経済にどのような恩恵があるか」「自分の会社が参入できそうな仕事があるか」という点であることから、この点を重点的に調査分析した内容になっている。日本では風力発電の正確な姿が必ずしも国民に伝わっていないため、可能な限り世界常識の観点から講演を行ってきた。たとえば、風力分野における技術革新はめざましいものがあり、三菱重工・ベスタスが生産を開始した8MW機タービンの出荷先である英国北西部の沖合35kmのウオルニー洋上風力発電所は、102万kWであり、世界で初めて100万kWを超える風力発電所が間もなく誕生する。2015年末の世界の風力の設備容量は累計で約41500万kWであり、原子力の設備容量を超えた。また、風力発電の産業集積拠点が生み出す雇用は規模が大きく、ドイツのブレーマーハーフェン、クックスハーフェン、デンマークのエスビアノ、英国のグリーンポートハルなどが産業拠点として出現している。このように世界の新設電源の主流は風力発電であることを講演では強調してきた。日本でも、北九州市響灘地区、石狩湾新港地域、秋田などで、大規模な風力産業の拠点化が進んでいるが、なかでも北九州市のプロジェクトは、欧州に比肩する規模のビッグプロジェクトであり、北九州市経済に大きな恩恵を与えるものとして市を挙げて取り組んでいる。最後にゾーニングルールの重要性を提言する。