【WTOパネル・上級委員会報告書解説⑮】インド-鳥インフルエンザを理由とした特定農産品の輸入禁止(DS430)-地域主義に基づく衛生植物検疫措置の実施に向けて-

執筆者 石川 義道  (静岡県立大学)
発行日/NO. 2016年1月  16-P-002
研究プロジェクト 現代国際通商・投資システムの総合的研究(第II期)
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概要

インドは、鳥インフルエンザ(AI)発生を国際獣疫事務局(OIE)に通報する外国からの家畜・家禽製品の輸入を禁止する措置を実施した(AI措置)。AI措置では、AI発生国の領域内のAI清浄地域又は区画に由来する家畜・家禽製品について、それらの輸入を通じてもたらされるAI侵入リスクの相違に対応して輸入を認める構造となっておらず、むしろ国単位で一律に輸入禁止の対象とされていた。すなわち、AI措置はWTOの衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)の下で国際基準とされる「OIE陸生動物衛生規約(OIEコード)」が求める「地域主義(regionalization)」に基づいた制度設計となっていなかった。そこで米国は、インドのAI措置とSPS協定との整合性を巡ってWTO紛争解決手続を開始した。本稿では、本件パネル報告書および上級委員会報告書を概観した上で、地域主義に基づくSPS措置の実施が、SPS協定6条が定める手続的義務に加えて、SPS協定における他の実体的義務(例:2条,3条,5条)との関係でどこまで間接的に要求されているか、という点について検討を行う。