管理職への昇進はメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすのか

執筆者 佐藤 一磨 (明海大学)
発行日/NO. 2015年12月  15-J-062
研究プロジェクト 企業・従業員マッチパネルデータを用いた労働市場研究
ダウンロード/関連リンク

概要

本稿の目的は、経済産業研究所が実施した『人的資本形成とワークライフバランスに関する企業・従業員調査』を用い、管理職への昇進がメンタルヘルスに及ぼす影響を分析することである。分析の結果、次の3点が明らかになった。1点目は、管理職への昇進直後の年にメンタルヘルスが悪化するものの、その1年後には逆にメンタルヘルスが改善することがわかった。この結果から、特に昇進直後の労働者に対するサポートがメンタルヘルス悪化を回避する方法として有効だと考えらえる。2点目は、男女別に分析した結果、管理職への昇進によってメンタルヘルスが悪化していたのが主に男性であることがわかった。3点目は、『慶應義塾家計パネル調査』といった別のパネルデータを用いて同様の分析を行い、推計結果の頑健性を確認した結果、やはり昇進直後の年にメンタルヘルスが悪化することがわかった。ただし、昇進1、2、3年後だとメンタルヘルスに変化は見られなかった。