日本の技術革新力の現状とその強化を目指して

執筆者 長岡 貞男 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2015年12月  15-P-025
ダウンロード/関連リンク

概要

持続的な技術進歩は、環境やエネルギーの制約などを克服し、国民の実質所得を拡大し、また経済厚生を持続的に高めていていく上で、必須である。技術進歩の促進には、知的財産保護を組み入れた市場メカニズムは強力な力を発揮する。同時に、日本の技術革新力を高めていくために、政府が進めるべき課題も多い:日本産業のサイエンスの吸収能力の強化、グローバルに知識や人材を組み合わせることができる環境の整備、スタートアップや技術市場の環境整備、標準の革新の推進、研究開発への合理的なインセンティブ設計に取り組める法的環境の整備、波及効果と付加効果が大きいプロジェクトにターゲットした民間研究開発への支援などである。本稿では、こうした日本の技術革新力にかかる研究を、以下の6つの群に分けて紹介し、その政策含意を議論している。(1)日本の研究開発の知識源泉:日米欧の発明者から見た特徴、(2) 日本産業のサイエンスの活用能力、(3) 研究開発へのインセンティブ設計、 (4) 技術スタートアップと技術市場、(5) 標準ベースのイノベーション、(6) 世界の知識の活用である。それぞれの節で研究のねらい、成果、そしてその政策含意を述べている。研究方法は、イノベーションの過程のミクロな(プロジェクト、人あるいは企業レベル)の新たなデータの収集と構築、これらのデータに基づいた実証研究、あるいは理論研究である。