グローバル化と人口減少下における地域創生の課題

執筆者 浜口 伸明 (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2015年11月  15-P-024
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概要

日本の地域経済は東京一極集中と表裏一体で衰退傾向にある。東日本大震災の被災地では時計の針が一気に進んだ感さえある。地方から大都市への人口移動は少子化と高齢化の社会的背景ともなっている。日本経済の持続的発展のために地方創生に向けた大都市と地方の経済活動のリバランシングを大胆に進める必要がある。大都市はイノベーションと新規事業の創出で一国経済をけん引する役割を果たしているが、子育ての機会費用を軽減するような支援策がとられるべきだ。頑強な空間上の秩序のもとでは、産業集積の地理的範囲は通常市町村の境界よりも広いので、自治体の広域連携を形成することが有効だ。地方に産業を定着させるように、移出産業を育成しつつ、獲得した域外マネーを地域内で循環させる必要がある。そのために、地域金融機関、中小企業、商店街などが重要な役割を持っている。地域内の「つながり力」の強さは企業の生産性を高め、イノベーションを促進する。そのために中小企業のクラスター化、卸売りなどが持つネットワークのハブ機能の強化が有効に機能する。一方でローカルネットワークの構成員の多様性を維持することは質が高いイノベーションを促すために必要となる。グローバル化の中で、大都市では企業が盛んに製品の入れ替えを行ったり、知識労働者の流入と流出を繰り返したりしている。このような新陳代謝機能を維持することは質の高いイノベーションのために必要である。地方のものづくりを守るサプライチェーンの強靭性と復元力強化も必要だ。地域におけるイノベーション創造を促し地域の多様性を広げることも重要だ。