グローバル経済における企業と貿易政策

執筆者 若杉 隆平  (ファカルティフェロー)
発行日/NO. 2015年11月  15-P-018
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概要

世界経済が発展する中で日本企業は製造業だけでなく非製造業に至るまで多様に国際化している。企業がどのように国際化し、それが雇用やイノベーションにどんな影響を与えただろうか。貿易政策や知的財産権制度は企業の輸出・投資やイノベーション、消費者利益に複雑な影響を与える。各国の貿易政策や制度の変化は相互に企業や消費者にどんな影響を与えるだろうか。WTOの貿易自由化交渉が停滞する一方、数多くの地域経済協定が締結された。協定の参加国が増え、対象範囲が拡大すると、貿易、投資、賃金、雇用、所得水準にどんな影響を与えるだろうか。貿易自由化が望ましいと思われている反面、現実の自由化には困難を伴うのはなぜだろうか、そうした困難を克服するには何が必要だろうか。研究期間直前に起きた東日本大震災は日本社会に甚大な被害をもたらしたが、企業は着実に復興への道を歩んだ。その過程で、何が震災復旧の妨げとなり、また、助けとなっただろうか。企業の繋がりは復興の助けとなっただろうか。企業のネットワークの発展は貿易投資にどんな影響をもたらすだろうか。国際貿易・投資が拡大する中国には特に注目すべきである。中国企業はどのように国際化し、市場改革、国有企業改革、政府の産業政策は、企業の生産性や貿易投資にどんな影響を与えただろうか。さらに、国境を越える貿易・投資の取引にとって、貿易投資に関する法制度は重要である。WTOの下で投資保護や文化財保護に関する法的枠組、独占禁止法などを国際間で矛盾なく運用するには何が必要だろうか。本稿では、こうした課題に理論・実証面から取り組み、エビデンスと政策処方箋を提供する。